第五十五話
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伊達屋敷に到着した直後、小十郎が限界とばかりに倒れてしまった。
顔面蒼白で呼吸も浅く、一時は結構危ない状態まで陥った。
こうなったのは今までの無理が祟ったのと、政宗様や他ばかりを優先させて自分を後回しにした結果だったってんだから本当に救えない。
でもまぁ、良くここまで持ったもんだよ。後で姉上に報告してがっつり説教してもらおう。
ちなみに意識不明の政宗様は、怪我の程度は大したことはないらしくて、どうして意識を取り戻さないのか分からないと侍医が首を傾げている。
寧ろ小十郎がこの状態なら理解出来ると言われてしまって、小十郎がかなり渋い顔をしていたのが印象的だった。
「今はしっかりと休んで、身体の調子を整えないと。祝言挙げる前にくたばったら最悪だよ?
待たせるだけ待たせて死んだら男のクズだからね?」
布団に無理矢理押し込めて横にしている小十郎は、今にも仕事に行きたそうにうずうずしている。
きちんと休まなかったら縛り上げるからね、と言っていることもあって今は大人しく寝ているが……
あとこの状態が何日持つか。
「く、クズ……分かっております。小十郎にはまだ成さねばならぬことがありますゆえ、ここで死ぬわけには参りませぬ」
うん、政宗様があの状態じゃあ医者が匙投げても意地でも生きるわよね。アンタは。
……でも、お姉ちゃんはちょっと心配なわけよ。
こういう性格だから、多少の無理を押し切ってストレスを必要以上に溜め込んじゃうから。
大雑把でもないけど繊細な性質でもないのに胃を痛めることなんかしょっちゅうだし……
今回のことで、普段以上にかなり無理してるんじゃないのかって、思っちゃうのよ。
「……泣きたくなったら何時でも言いなよ? 肩くらいは貸してあげられるからさ」
「……泣きませぬ。人の生死に関わる事に関しては、何があっても泣かぬと決めております」
全く、こんなに頭が硬くなっちゃって……何処で育て方間違っちゃったのかしら。
子供の頃はもっと柔軟だったような気がするんだけどなぁ。
「涙は心の浄化作用、泣かないことが強さじゃない。
……泣いた後できちんと立ち上がれればいいのよ。潰れてしまわなければ」
小十郎の癖のある髪を撫でて笑いかければ、小十郎は酷く悲しそうに笑い返してきた。
戦場で誰かが死んだら酷く自分を責めて、諸々が済んだ後に何日もまともに食事が摂れなくなるほどに思い悩むのを知ってる。
一度誓ったことを覆せるほど器用な子でないのは分かっているけれど……今回は被害が大き過ぎる。
関ヶ原の戦いが終わった後、魂が抜けてしまうんじゃないのかと心配にもなる。
「大丈夫です、姉上。戦場に出ている身ですから、死ぬ覚悟は決めておりますが……
小十郎は、死のう
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