第五十三話
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んな目をして戦場に出てくると……命落とすよ?」
先手必勝とばかりに、のっけから重力の力を全開にして慶次を思いきり門に叩き付けてやった。
刀を使うわけでもなく、ただ私がやったのは慶次に向かって手を翳しただけだから、
重力の力を持っていることを知らない慶次には苦しい展開だった。
とはいえ、これで簡単に倒されるほど慶次も弱くない。悔しいけどね。
「……っ! 分かってるさ……でも、じっとしてると壁の染みまで怖くなってきてさ。
……それでも、こうやって動いてる方が幾分かは気が紛れるんだ。……本当に、大事な友達だったから」
「その友達の後を追ってアンタも死ぬの? 自殺幇助はしたくないんだけどね」
「俺はまだ死ぬつもりはないよ」
圧力がかかっているってのに、慶次はそれをものともせずに私目掛けて突っ込んでくる。
刀を構えて防御の姿勢をとれば、重力でかなり威力は殺されてるけど重い一撃を食らってしまった。
これは……難易度婆娑羅? いやいや、あくまでここはゲームの世界だけど、私が体感してるのは現実だから。
手加減してるとこっちがやられるか。でも、この状況で刀を交えたくは無いなぁ……。
甘いって言われるのは承知だけど、倒しても後味は悪そうだもん。本当に。
「……引きなよ、慶次。ここがアンタの散り場所じゃないでしょ?
諸々の覚悟を決めてこの場に立っているってんなら、私も全力で相手するよ。
けど、今のアンタはそうじゃない。覚悟も何も決まらないのなら剣を交える価値が無いわ。
……正直、無駄に人の死を見たくないのよ」
ここまで自軍の兵の死を数多く見てきた。皆、最期に私に告白して死んでくもんだから、見送るのも疲れてきてる。
「だったらどうして、小夜さんは戦場に立つんだい? ここに立てば否応なしに人の死を見る。
自分だって命の危険に晒される……独眼竜の為かい?」
政宗様の為だけなら、きっとここまでやらないよ。だって、小十郎みたいに政宗様に心酔してるわけじゃないもん。
それに、そういうのは私の役目じゃないと思ってるから。
「……政宗様の為じゃない。これは、私の覚悟なのよ。
小十郎は政宗様を背を守るのが役目、私は小十郎が出来ないことをするのが役目なの。
……私は戦場に出てきた奥州の連中全てを家に帰す義務がある。彼らにも家族がいて、惚れた女がいる。
些細な幸せかもしれないけど、それを出来る限り壊したくはないのよ。……甘いと分かっているけど、守る為なら命を張るわ」
最も、奥州から逃げ出した私が言える言葉じゃないけれども。
でも、守りたいのは嘘じゃない。政宗様は小十郎が守ればいい。
小十郎は政宗様が守ってくれるから心配はしない。けど、他の連中は私が守らない
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