第四章
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「家に入ったりしてのそれはないね」
「ただ斬っているだけか」
「そうなんだ」
「悪い奴っていってもな」
それでもとだ、久則は言った。
「筋が通ってるな」
「そうかな」
「だってな、只の人斬り侍だろ」
「相手を問わず斬ってるよ」
「それじゃあ他にもいるだろ」
ゲームの中でもというのだ。
「刺客とかな」
「そういえばそうかな」
「何かこう、吸血鬼になってな」
「闇の帝王になるとか」
「ヤクザのドンになるとか独裁者になるとか」
「あと暴君とか」
領主になってだ。
「讒言とか暗殺を繰り返して領主になってね」
「そういう悪党にはならないんだな」
「最初はそうなろうって思ってたけれど」
「時代劇観てか」
「人斬り侍になったんだ」
雄太郎は笑って久則に話した。
「結局ね」
「まあ確かに悪い奴だけれどな」
「罪のない人でも平気で斬ってるからね」
「何かこうな」
首を傾げさせてだ、久則はその人斬り侍としてゲームを楽しんでいる雄太郎に言った。どうにもと考えている顔で。
「もっとな」
「久則の考えている悪党は」
「汚職政治家とか悪代官とか」
「悪い貴族とか」
「独裁者とか私腹を肥やす官僚な」
「そういうのなんだね」
「御前もそうなるって思ってたんだよ」
雄太郎もというのだ。
「斎藤道三さんの話を聞いてな」
「まあ気分でそうしたから」
「そうか」
「うん、けれど楽しいよ」
人斬り侍もというのだ。
「何かとね」
「そうか」
「今日は何人斬ろうかとか考えてね」
「斬るのは誰でもよくて」
「妖刀はもう凄くなってるから」
斬りまくってというのだ。
「もう一日何人もの血を吸ってるからね」
「それは怖いな」
「このままどんどんいきたいね」
「じゃあ頑張れよ」
「うん、最高の人斬り侍を目指すよ」
笑って言う雄太郎だった、そしてだった。
彼は実際に人斬り侍であることに徹していた、だが。
ある日だ、雄太郎は登校してすぐにだ、久則のところに来て項垂れてぼやいた。
「やられたよ」
「返り討ちにあったか?」
「いや、賞金首だったじゃない」
「人を斬りまくってな」
「それで狙って来た冒険者も多かったけれど」
それでもだったというのだ。
「その中で物凄く強いのがいたんだ」
「それでそいつにか」
「うん、倒されたんだ」
「そうなったか」
「それで言われたんだ」
その倒した相手にというのだ。
「悪党の最期なんてこんなものだってね」
「何かお約束だな」
「完全に時代劇の悪役になった気分だよ」
「大菩薩峠か?」
久則は途方もない長編小説の名前を出した。
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