第五十二話
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「……他の兵に、あげて下さい。小十郎は平気でございます」
まー、強がり言っちゃって。ここまで来ると流石に腹が立つわ。
「……いちいち世話焼かせるんじゃねぇよ、とっとと飲め。これ以上ガタガタ抜かすと潰すぞ」
つい苛立ってそんなことを言えば、小十郎がびくりと身体を震わせて素直に薬を受け取って飲んでくれた。
全く、初めから素直に受け取っておけばいいのよ。そうすれば私も優しくしてあげるってのに。
しばらくして痛み止めが効いてきたのかどうなのか、小十郎が眠たそうに瞬きをしている。
いや、どちらかというと気絶しそうだと言った方が正しいのかもしれない。
でも、この意地っ張りは絶対に眠ったりしないだろうからなぁ……。
軽く頭を私の肩に押し付けるようにして身体を支えてみる。
いつもならば人前で云々と騒ぐ小十郎が、珍しくされたままになっている。
やっぱり状態が良くないのか、抗議も出来ないくらいに。
「少し眠りな。何かあったら私が動くから」
「……申し訳ありません……少しだけ……」
そう言いながら眠ってしまったところを見ると、こちらの予想以上に状態が良くないのかもしれない。
起こさないようにそっとその場に横にして、政宗様の身体に掛けていた布を半分引っ張って小十郎にも掛かるようにしてあげた。
……いい歳した男が二人して同じ掛布で肩並べて寝てるって……結構恐ろしい光景だわ、コレ。
でもネタには持って来いだ。携帯あったらマジ写メりてぇ……。
出来ればもっと温かいところで寝かせてあげたい。
小十郎にしろ、政宗様にしろ……そして、今苦しんでる兵達も。
ゲームじゃただのモブでも、この中じゃ一人ひとりにきちんと名前があって、普通に人間として生活をしている。
単なるゲームのデータの一つじゃなくて。女の話とかで盛り上がったりとか、ちょっとしたことで皆で騒いでみたりとか……普通に生きてる。
それに、彼らを待つ家族もいる。だから、出来れば全員無事に帰してあげたかった。
……きっと、越後では甚大な被害が出る。
全滅はしないだろうけど、半分くらい……いや、それ以上に減らされることを覚悟した方が良いかもしれない。
じわりと浮かんだ涙を必死に抑える。
泣いちゃいけない。泣いたら小十郎が必要以上に苦しむことになる。
……ただでさえ、こんな負け戦で政宗様も意識不明だ。これ以上必要の無い負担を心にかけさせちゃ駄目だ。
突然私の頭に掛布が降ってくる。何かと思って顔を上げれば、そこに風魔が立っていた。
……これ被ってりゃ、泣いてても気付かれないって? 本当に……優秀過ぎる忍で嫌になっちゃうわ。
「……ありがと」
跡が残らないように気をつけながら、私は声を殺して
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