第五十二話
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まだまだ分からない、そうなって悲しむ人がいるってことを。
……分からないように育ててしまったのは、私も含めた周りの人間のせいなんだと思う。
それが、キャラクターとしての側面であったとしてもね。
風魔に休める場所を探ってもらい、そこへと軍を移動させた。
逃げる時にいた約三千の兵は、二千弱まで減っている。
しっかり数えたわけではないから確かなことは言えないけれど、どれも小田原の戦いでの傷が原因で亡くなっている人間が多くなっている。
街道を越えた時の攻撃は、小十郎が頑張ったおかげで然程影響が無かったから。
あの街道を越える直前になって、破傷風の症状を出す人間が圧倒的に増えた。
清潔を維持するのが難しいこの状況、破傷風も怖いけどその他の感染症の蔓延が怖い。
全体的に身体の抵抗力の落ちてる今、軽い風邪でも命取りになる可能性はある。
追撃の恐れがないのであれば、一度ゆっくり休んで体調を整えたいところではある。
そうは言っても敗走している身、追撃がないからと迂闊に町に行って宿をとるわけにもいかない。
人が多くなる分、何処で誰が隙を狙って仕掛けてくるか分からない、そんな危険性を悪戯に増やしてしまう。
一通りの手当てを済ませて最後に政宗様の様子を見に来れば、小十郎がその傍らで座ったまま眠っている。
大抵こういう状況なら眠らずにおくものなのだけど……
珍しいこともあるもんだ、そんな風に思って肩に手を置いた瞬間、その身体が大きく揺れた。
「う、うわっ!」
どうにか支えてやったものの、変な声を上げてしまったせいか兵にこの状況を見られてしまった。
小十郎が落ちたら士気が下がる、それは分かっているからどうにか乗り切らなければならない。
「ちょ、ちょっと、こんなところで甘えないでよ! 政宗様がこんな状態で心細いのは分かったから!」
……後で小十郎に怒られるような気がしたけど、前例らしい前例があるもんだから兵達はいつものことと目を逸らしてくれる。
それを見て、私は小十郎を目立たないように頑張ってその場に寝かせた。
若干だが呼吸が荒い。熱もある。無意識にだと思うけど、腹を押さえている手の力が篭っている。
苦しそうに顔を歪めて眠るそれは、決して兵には見せられない顔だ。
やっぱり一回休憩取って正解だった。この調子だと絶対に一度何処かで倒れてた。
「痛み止めでもあれば良いんだけど……」
そんなことを呟くと、風魔が私に薬を差し出してくる。本当この忍は優秀で有難いわ。
「小十郎、しっかりしなって」
頬を軽く叩いて声をかければ、ぼんやりと小十郎が目を開く。
意識を失っていたことに気付いたのか、渋い顔をして身体を起こす。
「痛み止め」
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