第四章
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奥野にだ、こうも言ったのだった。
「ではね」
「これから現場に行くんですね」
「ホテルなら着替える場所もあるし」
「着替える?」
「そう、じゃあ行きましょう」
堀江は自分からだ、そのホテルに向かった。そしてだった。
ホテルに入るとだ、堀江はすぐに従業員の人に話した。
「空いているお部屋あるかしら」
「事件のことは」
「ええ、聞いてるわ」
「だからですね」
「着替えさせてもらってね」
「解決してくれますか」
「任せて。その為に来たから」
堀江は余裕を以て従業員の人に話す、そしてだった。
奥野にはだ、こう言ったのだった。ケーキ屋を思わせる妙に可愛らしい感じのホテルの一階の受付の場で。二人の傍にはホテルの各部屋のパネルがある。
「君は現場の前にいて」
「前にですか」
「私が来るまで現場に来たら駄目よ」
「はい、それまではですね」
「待っていてね」
現場であるホテルの部屋の前でというのだ。
「いいわね」
「わかりました、では」
奥野は命令に忠実に応えた、そしてだった。
奥野は実際にその402号室の前に来てそこで堀江を待った、言われた通りその前で少し待っているとだ。
堀江が来た、そうして彼に声をかけてきた。
「お待たせ」
「えっ、監察官それは」
「これが私の仕事着なのよ」
白い着物と紅の袴、所謂巫女の格好だった。右手にはお祓い棒があり左手には何枚ものお札がある。
「お祓いなのよ」
「巫女さんですか」
「そうよ、私は神社の娘で」
「警察官ですよね」
「スカウトされたの、警視庁に」
「高校を卒業されて」
「すぐにね、お祓いというか悪霊の類に対する監察官としてね」
その切れ長の目と小さな唇の顔で話した。
「いるのよ」
「そうだったんですか」
「ええ、驚いたかしら」
「かなり。そういえば」
ここでだ、奥野は先程のやり取りに気付いた。それは。
「イン『スペクター』って」
「わかったわね」
「はい、スペクターは」
「幽霊でしょ」
「英語で」
「それでなんですか」
「この言葉は私の洒落よ」
楽しそうに笑ってだ、堀江は話した。
「監察官に任命されたのはそれ抜きだから」
「そうなんですね」
「けれど実際に幽霊達の世界に入る」
「イン『スペクター』なんですね」
「そうよ、ではいいわね」
「これからですね」
「はじめるわ」
彼女の仕事をというのだ。
こうしてだった、堀江は部屋に入った、勿論奥野も続いた。その部屋の中はというと。
オーソドックスなラブホテルの部屋だったがだ、その中が。
派手に荒れ狂っていた、部屋の中にあるあらゆるものが乱れ飛んでいた。堀江はその様子を見て普通の口調で言った。
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