第二章
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「どうぞ」
「よし」
その言葉を受けてだ、奥野は小声で呟いてだった。
扉を開けた、すると官公庁特有の無機質かつ機能的な、広さまでがそうである部屋の中に机が一つあり。
その前に一人の女が立っていた。膝までの縦縞が入ったタイトスカートのスーツにネクタイ、黒ストッキングとヒールという服装でだ。
黒のロングヘア、切れ長の目に小さな赤い唇に細く長い眉でだ。背は一五七程ですっきりとしたスタイルの二十代と思われる女がいた。その彼女がだ。
自分からだ、部屋に入って来た奥野に言って来た。
「はじめまして、奥野修治巡査ね」
「はい」
奥野は敬礼をして女に応えた。
「この度特別監察官室に転属となった奥野修治巡査です」
「そうね、私は堀江由美子警視」
女はここで名乗った。
「特別監察官よ」
「貴女がですね」
「そうよ、これから宜しくね」
「はい、お願いします」
「貴方の席は用意してあるわ」
既にという返事だった、見れば。
堀江のものと思われる部屋の奥にある奥野が部屋に入って真っ先に見た席の左脇にだ。その席があった。堀江はその席を見つつ奥野に話した。
「ここよ、ではね」
「すぐに机に荷物を置きます」
「そうしてね」
「そして仕事は」
「肝心のそれね」
「はい、どういったものでしょうか」
「おいおいわかるわ。けれどね」
淡々とだ、堀江は奥野に話していった。
「普段は何もないわ」
「何もないですか」
「そう、ここで待機ということになるわ」
この特別監察官室でというのだ。
「普段は漫画を読むなりゲームをするなりしてもいいわ」
「あの、それは」
「いいのよ。普段は本当に何もすることがないから」
微笑んで言う堀江だった、その小さな唇で。
「そうしていてもいいのよ」
「そうですか」
「だからそうしていてていいわ。何かあれば」
「その時はですね」
「この部屋を出て働くことになるわ」
「そしてその仕事もですね」
「現場でわかるわ」
部屋を出て向かったその場所にというのだ。
「その時にね」
「そうですか」
「とにかくそれまではね」
「普段はですね」
「ここで自由にしていいわ、トレーニングをしてもいいし」
「トレーニングルームで」
「とにかく自由にしていいわ」
普段はというのだ。
「そうしていてね」
「わかりました、それでは」
「ええ、それじゃあ宜しくね」
「はい」
奥野は再び敬礼で挨拶をし堀江も応えた、こうして彼は特別監察官付の仕事をはじめたが。
その仕事は実際にだ、普段は何もすることがなく。
定期に出勤して後はトレーニングをしたり部屋で適当に過ごしたり。そうしたことばかりであった。堀江もだ。
自分の机でいつも本を読んでいた、その本はというと。
「
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