第五章
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その彼等の攻撃も受けてだ、そして。
ドイツ軍は次第に動きを止めた、そこにだった。
次第にだ、頼みの天候がだった。
晴れてきた、その空を見てだった。
ノボトニーは戦車のハッチから忌々しげに舌打ちしてだ、こう言った。
「あと少しだったのにな」
「晴れてきましたね」
「来るぞ、奴等が」
忌々しげな口調がさらに強くなった。
「もう少ししたらな」
「どうしますか」
バルトシュタットはノボトニーに問うた。
「ここは」
「どちらにしてもだ」
空が晴れてもというのだ。
「攻めるしかない」
「そういうことですね」
「死ぬ気で行くぞ」
攻撃を続けるというのだ。
「燃料と弾薬の続く限りな」
「戦車が動く限り」
「いいな、攻めるぞ」
「それしかないですね」
バルトシュタットは上官の言葉に頷いた、そして。
彼等は天候が晴れてもまだ攻撃を続けた、だが。
その彼等にだ、ノボトニーの予想通り。
空から航空機、ヤーボが来てだった。
ノボトニーの部隊を装備しているロケット弾や機銃で攻撃していた、陸では無敵の新型戦車達もだった。
彼等の攻撃を受けてだ、為す術もなく破壊されていった。それはノボトニーとバルトシュタットのそれぞれの戦車も同じで。
破壊され彼等は乗員達と共に脱出した、だが部隊はそれでも進撃しようとしたが
師団長からの指示が来た、それはというと。
「攻撃中止だそうだ」
「そして、ですね」
「撤退しろとのことだ」
傍にいたバルトシュタットにも言う。
「このアルデンヌからな」
「そうですか」
「だからだ」
また言う彼だった。
「生き残っている者を集めてだ」
「即座にですね」
「撤退だ」
そうするというのだ。
「この森からライン川までな」
「我々の部隊はですか」
「そしてだ」
その森からというのだ。
「そこで戦う」
「わかりました」
バルトシュタットは苦い顔で頷いた、そして。
ノボトニーは自分の部隊に集結を命じてだ、苦々しい顔で言った。
「攻撃中止だ、ライン川西岸まで撤退する」
「了解です」
「それでは」
生き残った部下達も頷いた、そして。
彼等はアルデンヌから急いで退きはじめた、その中で。
ノボトニーは残っている軍用車に乗り込みその車窓から後ろを振り向いて隣の席にいるバルトシュタットに言った。
「勝利の道が変わったな」
「そうですね」
「因果だな、1940年は勝利の道でな」
「この1945年に敗北の道になりましたね」
「残念なことにな」
こう二人で話した、実際にアルデンヌの森は変わってしまった。勝利の道が敗北の道に。1945年で。
アルデンヌ1945 完
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