第十章〜奥州へ帰ろう〜
第四十九話
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けど……まぁ……それくらいなら、いいかな。
言われた通りにしっかりと胸に抱いてやる。
母親が子供にするように髪を撫でてやれば、兵はとても満足したような顔をしていた。
うっかりそんな表情を見ていて涙を零しそうになったけれど、今はまだ泣くわけにはいかない。
「俺……景継様を、ずっと……」
「……うん、ありがとう。今まで良く頑張ってくれた」
景継様に褒められた、そう言って兵は本当に安らかな顔をしていた。
「少し、休んでも……いいっすか? 起きたら……また、働きますから……」
「ああ。……ゆっくり休め」
そっと触れるだけの口付けを兵にする。兵は嬉しそうに笑って、目を閉じた。
「……おやすみ」
「お休みなさい……」
ぱた、と手が落ちて兵は本当に安らかな顔をして旅立っていった。
本当に零れそうになる涙を、唇を噛んで堪える。
……泣くな、まだ泣いちゃ駄目だ。私まで泣いたらどうしようもなくなるほどに士気が落ちる。
きつく拳を握って、この兵も薬草を持って来た風魔に託した。
きちんと弔ってやりたいが、如何せんこの状況だ。奥州の地で弔ってやれないことを許してもらいたい。
「……姉上」
気遣うような小十郎の手を払って、私は他の兵達の手当てに回った。
しばらくはこんな状況が続く。持つだろうか、私の心が。
……いや、持たせなきゃ。彼らの為にも。そして、政宗様や小十郎の為にも。
溢れそうになる悲しみを、私はそっと自分の心の奥底にしまいこんで、ただ目を逸らす。悲鳴を上げている自分の心には気付かないふりをした。
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