第四章
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「それでもな」
「私達はね」
「なれていない」
「そうとしか思えないから」
「聞こうな」
「ええ、じゃあ」
こう話してだ、そしてだった。
二人はある日拓哉にだ、夕食の後三人だけになって問うた。教会の神棚も前に来てそのうえで話すのだった。
一郎がだ、まず拓哉に問うた。
「俺達は御前の親か」
「えっ、何言ってるの?」
もうすっかり成長し百八十近い長身になった拓哉は一郎の言葉にきょとんとした顔になってそのうえで返した。
「そうじゃない」
「いや、しかしな」
『私達はね」
美代子も言った。
「血がつながっていないから」
「御前は里子でな」
「私達は里親でしょ」
「それでな」
「親子になれているのかどうか」
「僕も自分のことは知ってるよ」
生まれてすぐに孤児院に入って二人の里子になったことをというのだ。
「それでもずっと僕を育ててくれたじゃない」
「俺達がか」
「そうだよ、だからね」
それで、と言う拓哉だった。
「親子なんじゃ」
「それでか」
「だって僕ずっとお父さんとお母さんに育ててもらったんだよ」
拓哉はごく自然な感じで二人に答えた。
「だったらね」
「俺達はか」
「親なのね」
「それでずっとね」
さらに言う拓哉だった。
「二人共ずっと僕を大事にして愛してくれるよね」
「ああ、それはな」
「私達もね」
「拓哉が大事だ」
「何かあったらと思うと」
不安で仕方ないとだ、二人も答えた。
「いてもたってもな」
「とてもいられないわ」
「僕が怪我した時も麻疹やおたふくになった時も」
そうした時はいつもとだ、彼は二人に自分が子供の頃のことを話した。
「いつも看病してくれて病院に真っ先に連れて行ってくれたじゃない」
「それは当然だろ」
「当たり前じゃない」
これが二人の返事だった。
「俺達はな」
「拓哉の親なのよ」
「ほら、今言ったじゃない」
二人、特に美代子の言葉に対して言った言葉だった。
「親だって、親ってさ」
「血じゃないのか」
「心なのね」
「そうじゃないの?少なくとも僕にとってはね」
「俺達がか」
「親なのね」
「お父さんとお母さんだけだよ」
その親はというのだ。
「二人以外いないよ」
「そうか、俺達はか」
「拓哉の親なのね」
「最初からそうだよ、今だってこれからもね」
拓哉は二人ににこりと笑ってまた言った。
「そうだよ」
「わかった、じゃあな」
「これからもね」
「俺達は拓哉の親だ」
「そうであり続けるわ」
「僕もね、お父さんとお母さんの子供だよ」
そうなっているというのだ。
「宜しくね」
「ああ、心でそうなっているから」
「ずっとね」
「一緒にな」
「やっていきましょう」
「そ
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