妖精境の宝物
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る見込みはない。とはいえ――ただでやられる気もないが。
「……認めてあげよう、君たちの力を」
『ATTACK RIDE INVISIBLE』
……だが、海東は脱出用のカードを使って消えていく。海東の『目的』の為にも――ここでこれ以上のダメージを負う訳にはいかなかったからだ。そして海東が消えて数秒後、キリトは緊張の糸が途切れたように倒れ込んだ。
「パパ!」
ALOにおける本来の姿、ナビゲーション・ピクシーの姿となっていたユイが、倒れ込んだキリトを心配して駆けつける。キリトは随分とやられたHPをポーションで回復しながら、何とか半身を起こしてユイを撫でる。
「あ、ああ……ユイも、大丈夫か?」
「大丈夫です。調べてみましたが、特に何かされた形跡はありません」
最初に気絶したような状態にされた以外は、だが。ようやく疲れ果てていた身体も力を取り戻し、改めてキリトは先程まで戦っていた人物――海東大樹という男について考える。
「何だったんだ、あいつは……」
異世界を旅するトレジャーハンター。見たこともない何かを操るその姿。あれほどまでに執着していた、ユイというお宝を目の前にして、去る時は異常にあっさりと諦めていった――まるで分からないあの偉そうな男に、キリトは考えるのを止める。きっとこれは、考えても仕方のないことなのだろう。
「じゃあ帰ろうか、ユイ。アスナも心配してるだろうし」
「はい! ……でも、どうやって帰ればいいんでしょう……?」
ユイのその言葉にキリトもハッと気づく。海東に連れてこられたこの浮遊城上空、降りようにも見えない床があって降りられず、以前来た時は現実にログアウトしていた。……いや、あの時はまた特異な状況だったが。
――とりあえず脱出口はないか探してみるか、と立ち上がりつつ、海東に蹴りつけられた《聖剣エクスキャリバー》を回収する。二対の剣を鞘にしまいながら、とにかく歩こうとした瞬間、灰色のオーロラがキリトとユイを包み込んだ。来た時と全く同じ感覚に、帰れるのか安心したキリトが見たものは。
――まるで地獄のような光景だった。
「お、おいおい……どこだよ、ここ……」
空は血のように真紅に染まっており、周りの木々はありえない灰色をしている。世界自体にヒビが入ったように割れており、他のプレイヤーどころか人間の気配も感じない。それでも、それでもどこかキリトには、その光景に既視感があり――しかし理性が認めたくなく、震える顔で肩に乗った妖精姿のユイを見た。
冗談だろう、と。自分が感じた最悪の想像を笑ってくれ、と。
「パパ……ここは……」
ユイの震える声とともに、キリトの視界にある建物が映った。丹誠込められて作られたログハウス――だった
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