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[前書き]

[1]本文
「……っ」
「ん……」

わたくしがその部屋の前を通りかかると、ごにゃごにゃと囁き合うような声と、かさ、かさ、と衣擦れの音が聴こえました。

「ちょっと、むり」
「なんで?」

どうやらこの扉の向こうには二人の人間が居るらしいのです。
わたくしは、「セクシュアル・ハラスメント」の予感を感じ、戸に手を掛けました。

……ヂャッ

「……」
「……」

……わたくしがドアノブを恐る恐る回すと、中の空気は水を打ったように静まりました。

どうしよう、どうしよう、わたくしは胸の鼓動が早まるのと同時に、後ずさりしてしまいました。
もしかしたらちがうかも、とも思いました。

[1]本文


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