第二十話 王子の願い
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」
驚くフランシーヌ。だが、クーペは何処かこの状況を予想していたようだ。
「アルデベルテ商会が、この街の縫製職人から恨みを買っていたのは、知っていますよね?」
「はい、聞きました」
「この暴動のドサクサに紛れて、商会を襲撃したんでしょうね」
「だとしたら……」
フランシーヌは思わず息を呑んだ。
この反乱を画策した、男のあっけない末路にやるせなさを感じたのだ。
「いきなりですが、予定を変更してアルデベルテ商会まで行きましょう。生きていたら身柄を確保したいので……」
「裁判にかけるつもりかしら?」
「いえ、アルデベルテの弁舌の才は、是非とも欲しいと常々思っておりまして。身柄を確保したら殿下に推挙しようかと……」
「黒幕を味方に引き入れようって言うの!?」
元凶を生かし、あまつさえマクシミリアンの家臣にしようと画策するクーペに、フランシーヌは不信感を顕わにした。
「殿下も、同じ事をお考えなさると私は思っていますがね。要は優秀か否かの違いでしかありません」
「だ、だからと言って……」
「ミス・フランドールも殿下のご寵愛を受けたいのでしたら、それなりに有能でなくてはいけません」
「……それとこれとは」
論点をずらされたフランシーヌは顔を真っ赤にして俯くしかなかった。
黒煙の昇る方向へ走ると、燃え盛る建物を群集が取り囲んでいた。
更に群集が固まっている方向を見ると悲鳴の様な声が聞こえた。
「どうやら、アルデベルテ氏は生きているようです。早く助けましょう」
「……その様ですね……悪運の強い奴」
フランシーヌは不穏な事を言っていた。
「よし、スープクラウドを」
クーペが命令すると、3人の密偵団員が一斉にルーンを唱え始めた。
たちまちスリープクラウドの雲が発生し、群集の周りを漂う。
「ん?」
「なんだこれ!?」
「うう、眠くなってきた」
3人のスリープクラウドで群集はバタバタと倒れ、残されたアルデベルテは虫の息ながらも生きていた。
「彼に水の秘薬を」
「分かりました」
団員がテキパキをアルデベルテに治療を施した。
それに対して、アルデベルテに思うところのある、フランシーヌは遠巻きから見ているだけだ。
「おい! おまえら、なに勝手な事してんだ!」
「コイツは八つ裂きにされたって、文句は言えないんだよ!」
スリープクラウドの範囲外だった群衆たちがアルデベルテを奪還しようとして、たちまちクーペたちを取り囲んだ。
「……ど、どうしよう」
フランシーヌは遠巻きから見ていたおかげで、巻き込まれなかったが、このままにしては置けない。
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