第十九話 風穴のジャコブ
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きたいですね、ミス・フランドール。私ですよ、殿下」
メイドはフランシーヌをあしらうと、悪びれもせず自分の鼻をグニグニを折り曲げた。
「その鼻。お前……クーペか?」
「正解です殿下♪」
誰あろう、密偵頭のクーペだった。
「殿下のお知り合いですか?」
「直属の密偵頭クーペだ。彼? いや彼女か? ……とにかくコイツは変装の名人でね」
「……そうなのですか」
「ちなみに、この顔の少女は、ちょっと別室で眠っててもらってます。同じ顔の人間が二人もほっつき歩いていたら、色々面倒ですんでね」
「そうか……ともかく、お前が自ら動いたって事は、何かあったのか?」
「何かがあったも何も、殿下が捕まってしまってたじゃないですか。それで私自ら救出に動いたんですよ」
自分の事などお構い無しの、マクシミリアンに流石のクーペも少々呆れ気味だ。
「それにしては、動くのはずいぶん早かったな、ひょっとしてド・フランドール伯のこと……何か掴んでいたのか?」
「いえね、私たち密偵団はアントワッペンの裏事業の連中を見張っていたんですが、まさか表のド・フランドール伯爵を使って堂々と、しかもこんな短いの準備期間で反乱を起こそうとは……いやいや、私も一本取られましたよ」
ははは、と笑うクーペにマクシミリアンは違和感を感じた。
「ド・フランドール伯爵を使って……って、黒幕が他に居るのか?」
「ええ、居ますよ、大物が……もっとも、今では風前の灯ですが」
クーペは、大商人アルデベルテが以前起こった騒動の事と、そのアルデベルテが裏家業の連中と連絡を取り合っていた事について説明した。
「それじゃ、この事件はアルデベルテっていう奴が、プロデュースしたって事か」
「左様でございます」
「この事をフランシーヌは……」
マクシミリアンはフランシーヌに、この事について知っているか聞いてみようと思ったがが思いとどまった。
フランシーヌは俯いていて表情こそ見えなかったが、明らかに怒りで震えていたからだ、
「コホン……この件の黒幕は分かった。話は変わるけど、人質の彼らはどうやって救出する?」
「密偵団が5人ほど屋敷を取り囲んでいて、突入のタイミングを計っています」
「5人か、少々心許無いな」
「何分、昨日の今日ですので……ですが、トリスタニアや周辺の貴族領には既に報告が届いている頃でしょうし、夜になれば密偵団が10人ほど、増援にやってくる事でしょう」
「潜んでいる密偵団員の練度は?」
「皆メイジですが、潜入や諜報といった事が専門ですので、荒事には向いていません」
「……そうか、余り無茶な事は出来ないな」
ここは、大事を取って夜まで待とう……と、
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