暁 〜小説投稿サイト〜
竜のもうひとつの瞳
第四十五話
[3/3]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
今日の食事に肉なんか使ってないのに生臭い嫌な匂いが届いてくるんだもの、
あれは相当人を殺していないと染み付かないよ。
剣に狂っている小十郎でさえ、あそこまで血の臭いはしないもの。

 「石田殿はな、今まで数々の城をたった一人で落としてきた猛者なのじゃ。
その実力を認められて今では秀吉公の左腕とも言われておる」

 たった一人で、その言葉に目を丸くした私の反応は間違ってないと思う。
嘘でしょ、って言いたかったけど、どうにもこの人の纏う空気は尋常なものじゃない。
さっきも言ったとおり、血の臭いはするし余程多くの人を殺さなければ纏えない空気だもん。
本人の意思に関係なく波乱を呼ぶ……そんな印象を持たせるには十分過ぎるし。

 おじいちゃんの話を聞きながら、退席したいが退席出来ないといった様子の石田に助け舟を出すべくおじいちゃんを諌めることにした。
それを合図に石田が退席したのを見て、私はその後姿をこっそり目で追う。

 一人で落としてきた猛者、それがどれほどの実力かは分からないけど、
交渉が決裂した時に先陣を切って討ち滅ぼす役目を任されて来たのかもしれない。
竹中さんが稲葉山城で使った手の変形で、少数の手勢で城内を混乱させて大軍を仕掛けるって感じに。
無論、下ったら伊達討伐の任をとそういう打ち合わせだったのかもしれないけど。

 実力を見たいところだけど、今回はそんな悠長なことは言ってられない。
伊達が到着するまで後二日程度しかないと聞く。今日明日中に情報をきちんと集めてここを出ないと間に合わない。
説得する時間が無くなってしまう。流石にそれは困るから。

 胸に湧いた嫌な予感を、汁物を飲んで咽ているおじいちゃんの背中を擦りながら誤魔化していた。
[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ