第四十四話
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全くの愚鈍であるというわけではなさそうだ。
となると、いよいよ伊達が危ない。今の話を聞いているだけでも、あちらはかなりのやり手と見える。実際に剣を交えて戦うばかりではなく飴と鞭で心を縛ろうとしている。
……悔しいけど、伊達にここまで上手く出来る人間はいない。
荒くれ者の集まりであるうちに、そこまでまどろっこしいことが出来る奴が頭に浮かばない。
小十郎だって器用に立ち回れるかどうか。いや、器用に立ち回れてもあの強面で相手が竦むか。
どうも迷ってるみたいだけど、これは豊臣に下るのだろう。
北条を攻め滅ぼすつもりらしい伊達と、命を保障する豊臣では豊臣に傾くのは目に見えている。
まぁ、実際のところどうなのかは分からないけど、伊達が迫っている現状ではあまり悩んでいる時間もない……。
うーん、どう考えても伊達が不利だ。
北条だって結構な勢力なのよ? ただ、それを上手く扱える人間がいないってだけで、上手く扱える人間が出てきたら
力負けするのは目に見えてる。伊達は奥州一つだけの勢力しかないわけじゃないの。
奥州中の人間掻き集めても、豊臣と北条を同時に討てるとは思えない。
「……風魔に話を聞いてもらおうと思ったんじゃがのぉ。お前さんに聞いてもらって腹が決まったわい」
立ち上がったおじいちゃんの顔は、今までとは別人のようだった。覚悟を決めた、男の顔をしている。
……ちょっと待って、今ひょっとして私ってば伊達に壮大な死亡フラグ立てた?
引き止めようと動く間もなく、おじいちゃんってば年寄りだとは思えないほどの身軽さで走って行ってしまった。
あれは間違いなく使者に豊臣に下ると言いに行くのだろう。
「ちょ」
ちょっと待って、そんなことを言おうとしたところで背後から誰かに口を塞がれた。
素早く肘内をして逃れようと動くが、押さえ込まれてその動作も出来ない。
首を強引に動かして相手の顔を見れば、そこには風魔がいた。
「……アンタね」
「『伊達の不利になるようなことをするとは、随分変わった奴だな。手篭めにされて余程恨んでいると見える』」
「されてない!! まだ未遂!! ……じゃなくて、おじいちゃんが勝手に整理つけちゃっただけでしょ……
ああもう、これで伊達が壊滅的な被害でも被ったら本当に腹切って詫びなきゃならないわよ」
本当、あのおじいちゃんってば言いたいことだけ言って、さっさと判断しちゃうんだもん。
あれはきっと家臣が大変な思いしてるってのは想像つくけど……それはこの際置いといてだ。
こうなっちゃって一体どうしよう。伊達の不利を作り出しちゃった以上、どうにかそれを回収して戻りたいところだけど……。
この際、あのおじいちゃんの首でも手土産にして
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