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鎮守府の床屋
前編
2.最初の客
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 中々に激しいお出迎えを受けた俺は、そのまま意識を失ったらしい。気がついた時、俺は鎮守府施設内の医務室で寝かされていた。意識が戻った俺はそのまま執務室に連れて行かれ、この鎮守府の最高責任者である提督にまずは頭をこれでもかと下げられた。ファーストインプレッションこそ非常識極まりないものだったが、責任者は極めて常識的なようでなによりだ。

「すまん! この鎮守府に来てくれただけでも大感謝すべきことなのに……まさかこんなことを球磨がやらかしてしまうとは……!」

 俺の中のイメージだと、前線基地の司令官っていえば某鉄血宰相みたいなヒゲを蓄えたジジイが、上等な椅子に座って偉そうにふんぞり返ってるイメージがあったのだが……

「いや、別に怒ってないからいいっすよ。それよりも提督さん、随分若いっすね」
「いやホンっトすまん!! 球磨には俺からもキツく言っとくから!」

 ここの提督さんは、そう言って俺に深々と頭を下げていた。見た目も俺とそんなに変わらない年齢みたいで、どうやらいい友人になれそうな雰囲気の漂う人だった。

「提督さん、部下思いのイイ人ですね」
「いやいやいや。まぁ、とりあえずソファに座ってくれ」
「はい」

 提督さんに促され、そばにあるソファに腰掛けた。色落ちしている革製の生地の汚れ具合から、このソファが相当な年代物であることが見て取れる。でも物自体はとてもいいもののようで、腰掛けると俺の身体をふわっと包み込むように支えてくれて、座り心地がとても良い。

「ところで吉田くん。司令部からこの鎮守府のことは聞いてるか?」
「詳しいことは何も。ただ深海棲艦と戦ってる基地だとしか」
「その通りだ。もう長い間続いてるが、ここは前線基地の一つだ。さっき吉田くん……んー座りが悪いな」
「ハルでいいですよ。みんなそう呼んでるし」
「了解だ。さっきハルに粗相を働いた子……球磨って言うんだが、あの子をはじめとした艦娘たちが、深海棲艦と戦ってくれている」

 あの子が艦娘だったのか……深海棲艦がどんな奴か知らないけれど、化け物と戦う女の子だと聞いていたから、俺はもっとコマンドーみたいな女を想像してた……この鎮守府に来てから驚くことばっかりだ……。

「まぁあれだ。俺も実際に提督として働く前はハルと同じ勘違いしてたしな。確かにあの子たちは兵器みたいなものだけど、付き合ってみたら普通の女の子と変わらん」
「普通の女の子は俺の腹にえぐり込むようにパンチしてこないけど……」
「確かにそうだ……」

 さっきの惨劇を思い出し、俺と提督は苦笑いを浮かべた。

 その後、提督は司令部のお偉いさんとは違って、この鎮守府が置かれた状況を詳しく、そしてわかりやすく教えてくれた。やはりこの鎮守府は、激戦区の鎮守府の一つらしい。その割に拠
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