暁 〜小説投稿サイト〜
鎮守府の床屋
前編
2.最初の客
[8/11]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
俺は指の腹を使って丁寧に、丹念に球磨の髪と頭皮の汚れを洗い流していった。

「かゆいところはないですかお客様〜?」
「左足の裏の親指の付け根から5ミリほど下がったとこあたりが痒いクマ」
「自分でかけ」
「正直に言ったのにひどい仕打ちだクマ」
「どこに足の裏をかいてくれる床屋がいるんだよ」
「ハルは球磨の足の裏をかいてくれると信じているクマ。キリッ」
「たとえ世界中の床屋が足の裏をかいてくれても、俺だけはお前の足の裏を拒否し続けてやる」
「床屋の風上にも置けないヤツだクマ。提督に言いつけてやるクマ」
「言ってろ」

 一回目は髪の汚れを落とし、二回目は頭皮の汚れを落とす。コンディショナーで髪質を整えたら無事終了だ。球磨、お疲れさまでした〜。

「うむ。くるしゅうない。存分に堪能したクマっ」
「ちゃんと頭にバスタオル巻いとけよ〜」
「クマクマっ」

 シャンプーを存分に堪能した球磨は、ほくほく顔で頭にタオルを巻いていた。……あと信じがたいことだが、この段階ですでに球磨のアホ毛はびよんと立ち上がっていた。なんだそのアホ毛は。別の生命体なのか?

「クマクマっ」
「球磨。とりあえず次の順番の加古を呼んできてくれ」
「髪の毛はまだ濡れてるクマ。ハルは乾かしてくれないクマ?」
「おれは加古の頭をシャンプーするんだ。すまんがドライヤーはあっちにあるから自分で乾かしてくれ」
「了解だクマ〜」

 アホ毛をぴょこぴょこ動かしながら、球磨は一度シャンプー台から移動した。シャンプー台で待機している俺からは球磨と加古の姿は見えないが、二人の会話はよく聞こえる。

「加古ー。順番が回ってきたクマ」
「あぁ……りょうか……行く……」
「仕方ないクマ。球磨が肩を貸すクマ」

 しばらくごそごそという音が聞こえ、その後球磨に肩を借りた状態でかろうじてこちらの世界で意識を保っている加古がやってきた。加古、この短時間の間にうとうとしはじめたんかい……

「ハル。連れてきたクマよ」
「次はー……私のぉ……番……クカー」
「さんきゅー球磨。そのままシャンプー台に寝かせてくれ」
「球磨がこき使われてるクマっ!」
「ここまで連れてきたんだから最後まで責任もてよ……」

 球磨はジト目でこちらを見つめながら、半分寝ている加古をシャンプー台に仰向けに寝かせ、その顔にタオルをかけた。鼻提灯のせいなのか、不自然にタオルが盛り上がり、生き物のように脈動していた。

「……タオル、キモいな」
「……キモいクマ」

 初めて球磨と意見の統一が出来たことに驚きながら、俺は加古の髪をお湯で濡らし、丹念にシャンプーし始める。球磨はそんな俺の隣で加古の髪がシャンプーされている様をジッと見ていた。なんでお前ここにいるんだよ。

「さ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ