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鎮守府の床屋
前編
2.最初の客
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しむクマ」

 そもそも必要以上に暴力を振るってくるお前と、よく動いてくれる暁ちゃんを比べる方が無理ってもんだ。

「……よく動いてくれる暁ちゃんと同じ待遇を受けるつもりだったお前が理解に苦しむわ」
「了解だクマ。とりあえずあっちで見つけたハルのシザーバッグの中に入ってたハサミを、一本一本丁寧にひん曲げておけばいいクマ?」

 球磨がそう言いながら、俺の商売道具のキャンバス生地のシザーバッグをぶらぶらさせながらニヤニヤしてやがる。こいつを破壊されてしまうと俺はこの地で商売が出来なくなってしまう。ちくしょう人質なんて卑怯だぞ。

「すいませんやめてくださいおねがいします」
「分かればいいクマ。球磨は優しいから勘弁してやるクマ」

 ちくしょう。そのうち絶対こいつに一泡吹かせてやる……俺が球磨への復讐を心に固く誓った時、シャンプーを取りに行っていた暁ちゃんの悲鳴のような声が聞こえた。

「ハル〜! シャンプー重くて持ってこれない〜!!」
「愛しの暁が呼んでるクマ」
「行って助けてこいよ妖怪アホ毛女」
「でもそれを運んでこそ一人前のレディィイイ!!」

 終始こんな感じでのどかに作業は進んでいく。途中、散髪台で惰眠を貪っていた加古が……

「おぁああ……目が冴えてきたぁああ」

 と何の前触れもなく覚醒し、

「よぉおおし! 私も手伝うよぉおお!!」

 と急にやる気を出してシャカシャカと動き出してくれたのはよかったのだが……その最中に俺の顔をまっすぐ見据えながら、

「ところでさ、あんた誰?」

 と質問してきたのは正直力が抜けた。加古、お前何しに来たんだよ……妖怪アホ毛女は片付けに飽きたのか、勝手に霧吹きに水を入れて、それを俺の頭に吹きかけている始末。

「……ハル〜……飽きたクマ〜……」
「分かったからまずその無駄な霧吹きをやめろ。外は晴天なのに俺のとこだけどしゃぶりの雨じゃねーか……」
「クーマー……」

 やべえ。こいつマジで片付けの戦力にならねえ……

「暁は一人前のレディーだからまだがんばれるわよ!」
「暁ちゃんだけだよ真面目に片付けてくれるの……」
「それは聞き捨てならんクマッ」
「お前はいちいち噛み付いてこなくていいんだよ」
「よぉおおし! この片付け終わったら寝るぞぉぉおお!!」

 とは言いながらも少しずつ店舗は出来上がり、やがていっちょまえの床屋さん“バーバーちょもらんま”は完成した。明後日完成予定だったこの店が今日中に仕上がったのは、なんだかんだでこいつらの手伝いのおかげだ。加古が起きて手伝ってくれたおかげで、作業効率が劇的に上がったしな。

「出来た……ここが俺の城、バーバーちょもらんま……!」
「長かったクマ……数々の苦難を乗り越え球磨たち
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