前編
2.最初の客
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といてくれるか?」
「クマッ。ハルはどうするクマ?」
「おれは片付ける前に店の構造を把握する」
「了解だクマ〜」
ダンボールの開封を球磨に任せ、店内を見て回ると、聞いてた話の通り、シャンプー台が設置されている。何でも一度、美容師の男が一人、けっこう前にここで店を開いてたんだとか。
「そいつはなんで辞めちゃったの?」
「仲よかった子が轟沈したんだクマ」
「? 轟沈?」
「わかりやすく言うと、戦死したクマ。それでやる気が無くなって、店仕舞いしたんだクマ」
なるほどね。どうやら激戦区というのは間違いないらしい。今は比較的落ち着いているらしいけど、果たしてそれもいつまで持つかどうか……。つーか随分唐突にヘビーな話だな……。
「お手伝いに来たわよッ!!」
唐突に入り口がドカンと開き、セーラー服を着たちっちゃくて元気な女の子と、同じくセーラー服で背の高い黒髪の女の子が立っていた。背の高い女の子は球磨よりも見た目やや年上で、やたらと生気の感じられない眠そうな顔が印象的だ。
「ぉお〜! 暁! 待ってたクマぁ!」
「司令官に言われてお手伝いに来たわよ! だって暁は一人前のレディーだから!」
そう言って、えっへんと口に出しながら誇らしげに胸を張るこの子の名前は暁。白い帽子をかぶっていて、口を開けば『一人前のレディー!!』と言ってるそうな。こんなちっちゃな子でも艦娘ってことは、この子も戦うんだよな……。
「暁に〜……言われてぇ〜……手伝いにき……クカー……」
信じられないことに立ったまま眠り始めたこの美人のねぼすけさんの名前は加古。常時睡眠不足で、気がつくと夢の中に堕ちてしまっているらしい。この子も艦娘ってことは、やっぱり戦うんだよな。
……大丈夫なのココ? 前線基地なんだよねぇ? こんな子たちが戦ってるの?
「そ、それはそうと手伝ってくれるのはうれしいよ。ありがとう。おれは吉田ハルです。よろしく」
「あなたが新しい床屋さんね? 暁は一人前のレディーよ!」
俺が挨拶をすると、暁ちゃんは元気よくそう答え、おれと握手をしてくれた。ドコぞのアホ毛女と違って素直でいい子だ。
「クマッ!」
俺の心を読まれたのだろうか……その直後おれは球磨に思いっきり横方向に張り倒された。バーバーちょもらんまの店内に、爆発音に似た『バゴォォオオン』という音が鳴り響いた。
「いって! 何するんだ球磨!!」
「なんか失礼なことを言われた気がしたクマっ!」
「気のせいだ気のせいッ!!」
まったく……この暁ちゃんを見習って、お前も少しは一人前のレディーを目指し
「黙れクマッ!!」
再度俺の頭を球磨が張り倒し、『ドボッフ!!』というどう考えても破裂音にしか聞こえない音が、
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