前編
2.最初の客
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艦娘とかいう女の子は、単に敵と戦うための仲間というわけではなく、娘や家族のような存在なのだろう。うちのオヤジにそっくりな眼差しが、雄弁にそれを語ってくれた。
『とんとん。提督、球磨だクマ。呼ばれたから来たクマよ』
「おつかれさん。入ってくれ」
不意に執務室のドアをノックする音が聞こえ、ドアの向こうからは聞き覚えのある……つーかついさっき俺の腹に自慢の拳をねじ込んだ女の声が聞こえてきた。そいつは提督に促され入室し、俺と提督のところまでとことこと歩いてくると、やる気のない敬礼をしながらアホ毛をぐにぐに動かしていた。
「球磨、すでに知っているな? バーバーちょもらんまの店長、吉田ハルさんだ」
「最初っからそう言えばよかったクマッ」
言おうとしたら一本背負いからのコークスクリューパンチで致命攻撃を繰り出してきたのは誰だっけ? というボヤキが俺の心の中で響いたのは秘密だ。
「……ともあれハルに一度謝れ」
「ゴメンナサイダクマ」
ダメだ。こいつ自分が悪いとは微塵も思ってない。
「仲直りに握手でもしたらどうだ?」
「よろしくだクマ。キリッ」
「お、おう……」
「仲良くやるクマ。キリッ」
「よ、よろしく……」
このアホ毛女……球磨は、相変わらずアホ毛をぐにぐに動かしながらキリリとした顔で、俺に右手を差し出して握手を求めてきた。ちなみに『キリッ』てのは、ちゃんといちいち口に出してやがった。ムカつくのは、こんなヤツでも握手する手は女の子らしい柔らかくて温かい、小さい手をしてやがることだ。こんな小さい手でさっきは俺に致命傷を与えたのか……。
「そんなわけでハル、この球磨をこき使ってくれて構わん」
「球磨はこき使われるのはゴメンだクマ」
「黙れ球磨。それじゃあ頼むぞハル」
「ういっす」
「球磨はこき使われるのはイヤだクマ」
その後提督から『床屋の開店はASAPで』と必要以上にカッコイイ横文字で煽られたこともあり、取り急ぎこのアホ毛女を引き連れて、バーバーちょもらんまの店舗に向かうことにした。
「球磨はアホ毛女じゃないクマ」
「だったらそのアホ毛なんとかしろよ……」
「床屋さんのハルがなんとかするクマ」
「んじゃ一刻も早くそのアホ毛を切るためにも、さっさと準備するかー」
「クマッ」
アホ毛おん……球磨の案内で到着したテナントはこのおんぼろ鎮守府の中では比較的キレイな部類に入る建物の1階にあった。店に入るとすでにたくさんの荷物が搬入されていて、ダンボールが所狭しと並んでいる。ぶっちゃけ球磨がいてくれて助かった。この量の荷物を一人で片付けていくのはちょっと重労働過ぎる。
「ふっふっふ〜。球磨がいることに感謝するクマッ!」
「はいはい。とりあえずめぼしい箱をちょっと開け
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