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渦巻く滄海 紅き空 【上】
百  ナルト死す
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するや否や、肩を震わせる。

魍魎が己の肉体を器としたのだという充実感に満ち、彼はくつくつと喉を震わせた。
含み笑いはやがて哄笑へと変わり、黄泉と魍魎の笑い声が広大な空間の中で響き渡る。

しかしながら、自らの肉体を器として差し出した黄泉は魍魎の莫大な妖気の量を見誤っていた。
自身の身体を憑代としても、魍魎の妖気は黄泉の肉体からじわじわと滲み、そうして外へ洩れてゆく。
他の闇を促進させる妖気は緩やかに、だが確実に外の世界へ溢れ出していた。



「―――蘇れ、我が軍団?」
身を捻り様に黄泉が両腕を掲げると、地鳴りがあちこちで轟き始めた。
祭壇周囲を埋め尽くしていた置石が次々と瓦解し、中から武人の像が現れる。古代の甲冑に身を包んだ青銅の像は兵馬俑そのもの。

動くはずの無い石像は黄泉の号令に従い、立ち上がると、生気の無い眼窩に鈍い光を灯した。夥しい数の軍団を前に、今にも世界征服しようと意気込む黄泉を、胸の奥から魍魎が制する。
自身の身体から響く魍魎の声に、黄泉は従順に耳を傾けた。

『……まずは…鬼の国の巫女を殺せ…奴だけが我を封じる力を持つ……』
「―――仰せのままに」

己の内側からの魍魎の指示に従い、黄泉は深く頭を垂らす。そうして、改めて壮絶な笑みを彼はその口許に湛えた。


野望が叶う時は近い。



























暗澹たる空を覆っていた雲の合間から、ようやく月が顔を覗かせた。

零尾のおぞましい姿形がぼんやりと天上で浮かび上がる。白い巨躯から生えた黒き両翼がバサリ、と羽ばたくたびに、ふんわりとした羽根がひらひら舞う。

瞬間、それらが一斉に牙を剥いた。
柔らかい外見とは裏腹に、鋭い刃と化した羽根が一斉に地上へ降り注ぐ。
触手以上に鋭利な漆黒の刃。


回避不可能だと悟った再不斬達は皆即座に身構えた。倒れ伏すナルトを守るよう全員が彼の周囲を取り囲む。羽根一枚でも当たらぬよう、多由也と香燐がナルトの上に覆い被さる。


咆哮する零尾。回避不可能な天からの襲撃。
地上で全身を強張らせていた赤き髪の少女らが、ギュッ、と眼を強く瞑った。
刹那――――。




「お遊びが過ぎたようだな…」

零尾の巨躯の上で、小柄な少年が、独り、佇んでいた。


彼が姿を現したその瞬間、凄まじい勢いで地上へ降り注ごうとしていた刃物が全てその勢いを削がれ、ただの物言わぬ羽根と化す。
ひらひらと漆黒の羽根が優雅に舞う中、月を背にする少年の金色の髪が一際輝いた。
彼の姿を認めるや否や、多由也達は地上でその名を一斉に呼ぶ。


「「「「――――ナルトッ?」」」」



赤き髪の少女ら
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