百 ナルト死す
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た兵士が誰一人動かなくなったところで、ようやく黒髪の男が崖から降り立った。
遺跡を前にした彼の道を開けるように、進み出た青年二人が重厚な扉に手を掛ける。
ギギギ…、と左右に割れた扉の向こうには、無明の闇が広がっていた。
配下の青年達を外で待たせ、独り、闇の中を突き進んで行った男が、おお、と感嘆の声を上げる。
視線の先、広大な空間の中央に座した祭壇が異様な妖気を放っていた。
四方を柱に囲まれ、更に巨石が載せられた祭壇の扉には、幾重にも貼られた呪符がある。
禍々しいナニカを封印しているのが明らかなそれを前に、男は腕を掲げた。扉へと手を伸ばす。
見えない何らかの力が手を何度も弾こうとし、腕が妙な方向へ曲がりそうになるのを必死に耐え、男は口を開いた。
その口からつらつらと漏れ出すのは、呪いの響きを伴う言霊。
程なくして、ぱんッ、と何かが弾ける音がしたかと思うと、扉を守っていた呪符が一斉に燃え上がる。ピキピキ、と静かに罅が刻まれるや否や、突如吹き飛ぶ祭壇の扉。
石造りの扉は瞬く間に崩壊し、男の傍らを凄まじい妖気が通り過ぎてゆく。
やがて、男が穿った穴の奥から、この世の者とは思えぬ【声】が響き渡った。
『……あァ…、懐かしい………』
感極まった、それでいて現世を偲ぶ声音が、穴奥の暗闇から轟く。
その黒く蠢くモノを前に、男は片膝をつき、頭を垂れた。
「――お懐かしゅうございます、【魍魎】様…」
『……おまえは……』
「お忘れですか?黄泉にございます……かつて【魍魎】様の御力を使い、幽霊軍団を率いし、忍びの生き残り……」
黄泉と名乗った男は眼前に広がる闇を覗き込んだ。長い黒髪から垣間見えるその双眸には、彼の野望が色濃く映っていた。
『……何故、呼んだ……?』
「星は巡りました。今こそ、我らと再び手を結び――」
一言一句強めて熱意を語る黄泉の声には、世界征服の目論見がありありと満ちている。
反して、突然深い眠りから目覚めさせられた魍魎は、虚ろな声を上げた。
『…だが…魂だけのこの存在では……幾許の猶予も無く…我は消えゆくだろう…』
「ご安心を。暫しの間、私めの肉体を憑代となさいませ…」
酷く気怠けな声で語る魍魎の前で、黄泉は長衣の合わせをさっと開く。そうして何の躊躇も無く、自らの胸を切り開くと、其処に魍魎を誘った。
「…さァ、我が肉体に…」
黄泉の誘いに乗って、祭壇に穿たれた穴の奥で蠢いていた闇が大きく渦を巻いた。
直後、紫紺の光を帯びた黒い塊がうねりながら、黄泉の胸元へ押し寄せる。不気味な奔流は黄泉の身体を容易に突き上げ、その胸奥へと入り込んでゆく。
闇の塊が全て身体に納まったと感じ、黄泉は即座に開いた胸元を縫い合わせた。縫合を素早く完了
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