第八話「高町なのは」
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い。だからリオンは一言だけ
「ただの独り言だ...きにするな。」
そう言った。
なのはの方は何か言いたげだったが、そう言った彼の目を見て「じゃあまた来るね」と言って部屋を出て行った。
リオンは彼女が来るまで自分は何をしていたか直ぐには思い出せなかった。
視界の端に本が映ってそれを読んでいる途中だった事を思い出して再び開いた。
だが今度は集中できなかった。読んでいてもなのはの言っていた事が頭に浮かんでは消えていった。別になのはや『彼』が言った事だけが正しい訳じゃないだろう。…勿論正面からだけ見れば正しいのかも知れないがそれを押し通すだけで超えて行けるほど『生きる』と言うのは甘くはないとは思う。
どんな人間だって80年やそこらたてば終わってしまう。リオンはとりあえず今生きている事は置いておくとして16年でその人生に幕を下ろした。それだけ壮絶な人生だったと言うのはある。
だがそんじょそこいらの別に物語にされた事もないような人々は全く苦労していないのだろうか、80年生きれたからその人生は楽な物なのだろうか。そう言った意味でリオンも別になのはや彼と変わる事は何も無いのだ。だからそれはリオンにとっても真実であっていいのだ。だがそれで納得するには手軽すぎた...少なくとも前の世界で生きてきた16年に比べたら。
「簡単に手に入ったからそれが嘘と言う訳じゃあないんだろうな。」
その事はリオンも重々承知していた。泥を飲み、血を吐いて、歯を食いしばって求めても何も変わらないのかも知れない。
だがリオンはそれにたいしてこう答えるだろう。
それがどうした、と。
簡単に手に入ったからと言って...いや手に入ったなら尚更それを確かめる努力をする必要がある。
その事に思い至らせてくれたなのはには心から感謝していた。何より彼女との話は懐かしい気持ちにさせてくれて楽しかった。
彼女こそは今回の事件で最も潔白な人間だと言う事も理解していた。直感だったがリオンにはわかった。
彼女が嘘を一つも吐いていない事を、本心からフェイトのために戦っているのだと。
聞くとまだ彼女の年は二桁にもならないらしい。年端もいかない少女の何と言う優しさだろう。
だが、そういう気分の良い話をしていたはずなのに
「すまないな、高町なのは。」
そう言ったリオンの表情はなぜか苦悶に満ちていた...
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