2部 Aincrad:
第1章始節 奇縁のプレリュード 2023/11
1話 薄闇の片隅
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を敢行してくるだけなのだが、だからこそやりやすいというものか。ゴブリン自体は階層に相応しいステータスと数的有利でプレイヤーを圧倒するタイプのモンスター。個人的にはここより下層のエルフの連携が強敵であったように思えるが、この際優劣は横に放るとしよう。今やるべきはゴブリン退治だ。
………とはいえ、最前線から十六も下の層のモンスターに苦戦することもなく、淡々と殲滅を済ませる。最後のゴブリンを一閃の下に降して愛剣を鞘に納めると、窮地に遭ったプレイヤーに視線が向いた。別にHPが回復すれば逃げ帰っても咎めることはないのだが、随分と義理堅い性格のようだ。
「………貴方、攻略組なの?」
「あ、ええ、まぁ………はい」
「……ぷっ、ぷくくっ……!」
問われた声は女性。ローブのおかげで顔なんか判然としなかったが、ヒヨリやクーネのような同年代の類いではなく、どこか落ち着きのある成熟した声だ。どうやらそれなりに年上の方らしいが、それを意識してしまうと恐縮してしまう。何しろ明確に年上の相手だ。これまでSAOでは接触しなかったようなカテゴリーの相手に接し方で躓いていると、突如として女性は腹を抱えて笑い出したのである。
「え、あ……どうなさいました!?」
「ご、ごめんなさいね。あんなに強いのに、やっぱり見た目通りの男の子だったから安心しちゃって……ホントに悪気はないのよ?」
見た目通りとはどういう意味だろうか。詳細な説明を要求したいところだが、この場に留まっていてもモンスターの湧出が発生するだけだ。おまけに夜間ともなればモンスターも多く湧くし、パラメータも変化する。彼女の為にも一度はラーベルグに戻すべきだろう。手持ちに転移結晶でもあれば持たせたいところだが、生憎と品切れだ。こうなれば同伴する他ないだろう。
「………とりあえず、一旦主街区へ戻りましょう。夜間の狩りは危ないからお送りします」
「ありがとう。嬉しいわ」
「では、行きますよ」
「………あ、ちょっとだけ待って!」
先を行こうと一歩踏み出すと同時、呼び止められたことでたたらを踏みそうになるのをSTR値で堪え、努めて平静を装って振り向くと、女性プレイヤーはフードを外してこちらを見つめていた。短い髪を後ろで結んだ彼女は、やはり俺の知り合いにはいない年齢層に属するらしい。それでもたおやかな美しさを湛えた彼女は一切のブレもなくこちらを凝視してくるのである。
何をされるものかと手に汗を握っていた俺の警戒に反して、女性はにっこりと笑みを作る。
「助けて貰ったのに命の恩人の名前も知らないなんて、ちょっと失礼かなって思って……良かったら、教えてくれるかな?」
――――自己紹介。
実に忌々しい響きの言葉であるが、今日は奇跡的にヒヨリは不在だ
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