2部 Aincrad:
第1章始節 奇縁のプレリュード 2023/11
1話 薄闇の片隅
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の甲を数回ひらつかせ、男はそれ以降は完全に無言となる。
どうやら《話題の共有できない相手》であると認識されたようだが、ここで機嫌を取るわけにもいかないので退散することに。マップを頼りに大通りまで戻ると、すでに日は沈んだことで夜の帳が降りていた。ヒヨリとティルネルが同行していたならば一旦引き上げていたところだが、俺だけともなればそんな制約は無いに等しい。何に構うことなく目抜き通りを北へ進み、どこか寂しげな森を抜ける。
この辺りであればModに頼らずとも隠れ率を損なうことなく隠蔽スキルを行使できる。おまけに装備の色調も暗色系に統一されていることから夜間や暗所においては更に隠れ率にプラス補正を受け、この界隈で活動するプレイヤーであれば感知すら困難であろう。最前線の隠しダンジョンを偵察していれば、この程度はザルに等しいというのも事実だ。何に迫られるでもないが、このままダンジョンに直行してしまおうかと考えた矢先、やや離れたところから剣戟の音が耳に届く。
反射的に音源の方角を向くものの、森という見通しの悪い地形では状況が把握できない。もし仮にプレイヤーがモンスターと戦闘を行っているのだとしても、剣戟の音が疎らに響いてくるということから察するにプレイヤーは少数であると思われる。劣勢にせよ優勢にせよ、どちらにしても見過ごした結果死んでしまったとあっては寝醒めも悪いというものだし、他のプレイヤーに知られていないからこそ業物は逃げないだろう。ともなれば、急行あるのみ。森を駆け抜けて音源へと向かうと、そこには俺が予想した中で最悪に最も近い光景があった。
一人の盾持ち片手剣のプレイヤーが、五匹の緑の肌の亜人――――ゴブリンに囲まれていたのである。
じりじりと追い詰められるプレイヤーを、下卑た笑みを浮かべつつ粗製の得物を手ににじり寄る構図は、目の当たりにしてしまっては看過できないものだ。レベリングの最中で獲物をかっさらうわけでもないと胸中で言い張り、腰に差していた片手剣《ソロースコール》を抜き放ち、地面を蹴り飛ばした。
「ゼァァッ!!」
三歩で間合いを捉え、逆手持ち《バーチカル》特有の刃を突き立てるように振り降ろす刺突が、一番手前のゴブリンの肩口を穿ち、胴を突き抜いた。深々と我が身を貫いた刀身を何事か理解できずに一瞥くれた頃にはHPが全損し、ゴブリンはポリゴン片となって四散する。
「おい、アンタ。危なかったらコレを使っておいてくれ」
懐からティルネル謹製のポーションを放って渡すとゴブリンは皆一様に俺に牙を剥く。
仲間思いであることは良い事だ。仇を討たんとヘイトをこちらに向けてくれれば、守る者に気兼ねなく立ち回れるのだから。
しかし、そんな義勇溢れるゴブリンも実際のところは獣じみた金切り声を張り上げ、単調に突進
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