巻ノ三十 昌幸の智略その十三
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「羽柴家にも今以上に侮られぬしな」
「他家にもですな」
「十万石の分だけ重く見られます」
「信濃のほぼ全てを手に入れたことになりますし」
「大きいですな」
「だからじゃ」
それ故にというのだ。
「殿は上田も組み入れることを望まれておるのじゃ」
「ですな、上田に来るまで時がかかりましたが」
「羽柴家との戦があったので」
「ここで、ですな」
「上田もですな」
「手に入れるぞ」
こう言ってだった、鳥居は軍を上田に進めさせていた。兵は減ってはいないが疲れが溜まっているのを感じながら。
昌幸は徳川家の軍勢のその状況を聞いてだ、こう言った。
「よし、兵糧や武具は襲えていないが」
「それでもですな」
「この状況は、ですな」
「よい」
こう言うのだった。
「充分じゃ」
「ですな、では」
「この城に来れば」
「その時は」
「相手の考えはわかっておる」
徳川家の考えはというのだ。
「それならば対することは容易じゃ」
「ですな、攻め落とす気がないのなら」
「本気で攻めては来ませぬ」
「それならばです」
「思いきり攻めていきましょう」
「それも徹底的に」
「言っておくが降る気はない」
昌幸はこのことをはっきりとだ、家臣達に告げた。
「真田はこの上田で独自の家としてやっていく」
「徳川家には降らず」
「他の家にもですか」
「降らずそして」
「大名としてやっていきますか」
「そうじゃ、万石取りは確かに大きい」
徳川家が言うその扱いはというのだ。
「家康殿は確かにわしを認めて下さっておる」
「ですな、確かに」
「あの方は殿を高く買っておられます」
「そしてそれ故にです」
「万石取りで迎えると言われていますな」
「その様に」
「よいお話じゃ」
昌幸にしてもというのだ。
「御主達も厚く遇されるであろう、しかしな」
「それでもですか」
「我等は我等でやっていく」
「そうしていきますか」
「ここは」
「当家は羽柴家の天下の下で大名として生きる」
これが昌幸の考えだった。
「わかったな」
「だからこそですな」
嫡男の信之が父に問うてきた。
「徳川殿には従わぬ」
「そうじゃ、無論他の家に対しても同じじゃ」
「上杉、北条両家に対しても」
「降らぬ」
決してというのだ。
「どの家にもな」
「あくまで真田は真田ですか」
「武田家の家臣であったが」
過去のこともだ、昌幸は話した。
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