浮遊城の怪盗
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こにいたのは、全身が鎧に包まれた機械仕掛けの兵隊。最初は何かのイタズラかと思ったアスナだったが、そのガラス玉と思わせる頭部がアスナを視線で射抜くと、その手に持っていた剣を変形させて銃とし、躊躇なくアスナにエネルギー系のレーザーを発射した。
――アスナに知る由はないが。その敵の名は《ライオトルーパー》と呼ばれていた。
「はっ!」
不意をつかれた形となったアスナだったが、かつて《閃光》と呼ばれたその腕前は鈍ってはおらず、近くにあったケーキを切り分ける用のナイフで、ソードスキルを伴ってそのレーザーを防ぐ。
耐えきれずナイフはポリゴン片となって消滅してしまったものの、その隙を狙ってアスナは自身の細剣をアイテムストレージから取り出し、突進系ソードスキルでライオトルーパーに果敢に切りかかっていく。アスナの全体重がかかった突進に、たまらずライオトルーパーは吹き飛ばされ、ログハウスの外の竹林へと後退していく。
「……っ!」
歩きつつ装備を対戦用の装備のものにしながら、かかさずその吹き飛んだ騎兵に追撃に向かったアスナが見たものは、今し方吹き飛ばした物と同種の敵。それが複数体――竹林から起き上がってきた先の個体も含めて、正確には九体ほど、アスナたちのログハウスを取り囲んでいた。
ここが《圏外》である以上本来ならば、アスナの他者への攻撃も自動で防がれてしまう筈なのだが、今し方吹き飛ばしたライオトルーパーへの攻撃にそれは適応されなかった。だがあちらからの攻撃も、そのルールが適応されずにアスナに襲いかかった。モンスターでもなくプレイヤーでもない存在――アスナにとって一つ確かなのは、それらが自分たちにとって『敵』だということだった。
「ママ!」
「ユイちゃんは家の中で隠れてて!」
心配そうなユイを守るようにログハウスの扉を閉めると、アスナは正体不明のライオトルーパーに挑んでいく。……この短い時間で考えたとすれば、アスナの取った行動に間違いはない。戦闘力のない娘である存在を守ろうと安全な場所に隠し、自分一人で正体不明の存在に挑んでいく決断は、勇気ある行動であるとともに最適解だ。
ただそれが、狙いがユイでなかったのならば。……いや、ログハウスに近づく不審な影があったとすれば、たとえ戦闘中だろうとアスナはそれに気づいて駆けつけ、その不審な影を一瞬のもとに切り裂いてみせただろう。
相手がアスナにとって常識外の存在でなければ。
「あ……」
ユイはもう一度周囲の状況を検索してみるが、近くにいるプレイヤーはアスナただ一人。もちろんモンスターの姿もどこにもなく、ユイからすれば――いや、この世界を構築するプログラムからすれば、あの鎧の騎兵隊はどこにも存在しないのだ。自分に理解できない存在と状況に怯えるユ
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