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【仮面ライダー×SAO】浮遊城の怪盗
浮遊城の怪盗
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 かつて世界を震撼させたデスゲーム、ソード・アート・オンラインが、人々の記憶から薄れていってしばらくして。あの凄惨な事件があったにもかかわらず、人々のヴァーチャル世界を望む声は大きく、かつてないほどの速度で発展していった。

 そしてある人物が発布した《ザ・シード》と呼ばれるシステムにより、世界には数えられないほどのヴァーチャル世界が生まれていた。ここはそんな世界の一つ、剣と魔法と妖精を世界観として作られた、かつてのSAOと同じくVRMMORPG――アルヴヘイム・オンライン。

 通称ALOと呼ばれるその世界は、SAO事件と同様に世間の話題をさらった事件があったものの、今はトップクラスの人気を誇るVRMMORPGとなっていた。かつてのSAOに存在した浮遊城《アインクラッド》を実装したとして、以前の事件とはまた別の話題となっていたからである。言外のタブーとなっていたあのデスゲームの象徴だとして、実装直後は多大に批判が沸き起こったものの、いつしかそのような声は小さくなっていた。

 つまり、他に類を見ない大犯罪の象徴だったその城は、今や進化を続けるVR世界の象徴となっていたのだ。

「……ふぅ」

 そんな浮遊城《アインクラッド》の喫茶店において、黒い服でコーディネートしたあるプレイヤー――かつてのSAO世界を終わらせた、プレイヤーネーム《キリト》は一人で佇んでいた。俗にSAO生還者とも呼ばれる一員も、また多くこのALOという世界を楽しんでおり、キリトももちろんその一人だった。

 たまには、とソロでダンジョンを走破してきた彼は、町で少し休憩の時間を過ごしていた。自分以外に客はおらず、贅沢にテーブル席を独占しながら、頼んでいたジュースを飲み――もちろんただの味覚データに過ぎないが――その喫茶店でイチオシだと仲間のケットシーから聞いていた、この店限定のパフェを頼むか否か悩んでいた。

「むむ……」

 近く自分たちの家となる場所を買ったことで、最近キリトの懐事情は心もとなかった。しかし惹かれるその甘味に、ついつい声を出してまでメニューを睨みつけていた彼の視界の左上に、音声とともにメールの通知が知らされた。

「アスナ?」

 同じくSAO生還者である――とともに恋人でもある彼女からのメールは、家でケーキを作ったからみんなで食べないか、というお誘い。そういえば、ユイと一緒にそういうクエストに行く、と言っていた――とキリトは思い出し、一瞬でそのパフェへの未練を断ち切った。

 NPCの作った料理よりアスナが作った料理、一人で食べる料理より家族で食べる料理だ。そうと決まればさっさと帰ろうと、注文していたジュースを最後まで飲み干して会計を済ませ、席から立ち上がろう――とした時。自分の席の前に、一人のプレイヤーが座っていた。


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