一章
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それからゼロは近くの宿をとらせ、日が出てる間はずっとずっと寝ていた。随分無防備だなーって思ってソロソロっと近づくと、ものすごい目付きで睨まれた
めちゃめちゃ怖かったです
ゼロのこと、まだ何も知らないぼくだけど、音をたてずに近づいたのにこうやって目を覚ますし、あれだけの軍に追われていて……きっと簡単には生きていないのだと思う。だからなのかな。ゼロの言葉には重みがあった
「ぼくも同じ、か……」
それでも構わないって本当に思った。ゼロが殺した人はぼくが恨んでるひとでもなければ、名前も顔も知らない。きっとどこかに家族がいて、ぼくみたいにやりとげたいこともあって、大切なものがいっぱいあるんだ
それを奪う
嫌だ。嫌なのは、嫌だ
でもだからって目的を捨てたくはない
昔あった死体の山は雫神だったんだから
死体さえ残させてもらえずに滅んだ一族もたくさんあるんだから
八つ当たりにもならないし、敵討ちにもならない
だってぼくはやられてないし、やった人はいないし、やったことさえ知らない人が死ぬんだろうから
…………なんだか
うまくいかないな
「なんだ。悩んでんのか」
「……迷ってはないんだけどさ。……ぼくはみんなを助けたいだけで、他の誰かを殺したいんじゃない。目的達成までの道のりが……やりたくないことだから困る」
ただ、閉じ込められてるみんなを助けてニセモノの雫神を追い出せたらそれでいいのに
「不可能」
はっきりいいますね
「どっちもとろうとするな。天秤にかけろ。どっちがお前にとって都合がよくて好ましいか。それだけ」
「そんなうまいこといかないよ」
「殺されるくらいなら殺す。望みを果たせないまま生きるくらいなら望みを叶えて死ぬ。選べばいいだけだ。簡単だろ?」
簡単に言うけど
それは相当割りきってるからだ
ゼロはやっぱり普通と違う
「…………当たり前だろ。俺は普通を生きたことはないからな」
あれ?心読まれました?
「さて、交渉を始めようか。ガキ。お前は重要な点を忘れてる」
「重要な……?」
「手伝え、契約しろとお前はいった。だけどな、俺がそんな頼みの言葉で動くやつに見えるか?」
………………いえ、まったく
ゼロはベッドから起き上がり、にやりと笑って、さも愉快そうにぼくを見下ろした
「さて、契約者さまは俺に何をしてくれる?」
血の気が引いた
どうしよう
そういえば、なにも……わかんない
なにをしてほしいんだろう……
「……か、肩たたきます…」
「殺す」
「はい、ごめんなさい。えーと……」
ぼくは悩んだ。悩んで悩んで
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