第8話 ナンパ
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喫茶店でのレベルアッパーに関する話し合いが終わり、各々がそれぞれの場所へと向かう中でサソリは病院に帰る道すがら喫茶店での木山の言動や反応に対して視覚記憶と言語記憶を引きずり出して組み合わせていた。
知っていることに対して「知らない」と返答。
まあ、これは想定内。
目に隈を持ち、ボサボサの髪とどこでも脱ぎだす露出癖など風貌はかなり怪しいが、言っていることは正しい。
だが、次に訊いた質問の返答によりサソリが木山に対する疑惑が一層強くなった。
「お前がレベルアッパーで能力を手に入れたらどうする?」
という質問に対する回答は
「そうだな……自分の能力の限界を測ってみるかな」
この会話に違和感があった。
正直サソリにはレベルアッパーについて詳しく知っている訳ではない。
術の一種かそれとも丸薬のように使うかどうかも分からない。
しかし、使えば能力が向上する。話しの流れからそれは確定事項。
そして便利な能力には相応のリスクが存在する。
便利な能力、圧倒的な力が手に入るとするならば命を落とす危険性も高まっていく。
周知されていない一般の人間がそれに手を出すのは分かる……
危険性を考慮せずに使用するのは若者に特有の無茶アピールだ。
だがあの女は自分を研究者と言っていた。
研究者として答えるならばあの会話は一気に不自然になる。
仮に危険性があるかもしれないものに対して自ら使ってみるという発言。
サソリも傀儡の研究をしている。
その中で最たるものは、人傀儡というものだ。
通常の傀儡であればクナイを仕込んだり、起爆札を隠して使用するなど道具としての側面が強いが、人傀儡の利点は生前に使用していた術を傀儡を通じてサソリが使用できることだ。
この方法はサソリにしかできないし、技術も公開していない。
他里の忍を殺し、人傀儡に造り替え、術を使用する。
その時に最も重要になってくるのは「術を使った時のリスクや反動」の把握だ。
どれだけ凄まじい術であろうが、操っている操者に危険が及ぶのなら話にならない。
そう、研究者はリスクを恐れ、身の安全を最優先に考えるはず。実験をするならば自分の身の安全を確保してから行うのが定石。
それなのに迷いなく、あの女は「使う」と答えた。
研究者としてはおかしい。人体に使ったらどんな反応が出るか、ある程度のデータを蓄積してから使用するか判断をする。
木山に関しては、そのレベルアッパーというもの自体の発言を控えるような口調だった。
注意喚起はサソリの誘導で、副作用については白井。
むしろ、使うことに抵抗がない。いや、奨励しているような印象だ。
…………
やめた
何でこんなどうでもいいことに頭を使っているんだ。
レベルアッパーが危険とか能力を手に入れることができるなんて正直どうでも良かった。
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