第十七話 アントワッペン騒乱
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ド・ブラン夫人の方はというと、『夫人』という様に既婚者だったが、夫に先立たれ、残った遺産をどう使おうかと悩んでいたときにラザールに出会ったのだ。
ラザールは発明品などを提供し、ド・ブラン夫人は住居と食事を提供する、二人は恋愛感情の無いギブ&テイクの淡白な関係だった。
「奥様……先ほど、マクシミリアン殿下がお越しになられると聞きましたが」
「ええ、何でも、ミシン機を是非見たいと仰ってらしたわ」
「なるほど、ミシン機を……」
「粗相が無いように気をつけてね」
「努力はしますよ」
などと、語らっていると、外からド・ブラン夫人を呼ぶ声が聞こえた。
「何かしら? ちょっと行って来るから朝食、食べててね」
そう言って、小屋を出た。
ド・ブラン夫人が小屋から出ると、従業員の一人が息せき切って駆けて来る。
「どうしたの? そんなに慌てて……」
「大変です、元締め。門が……どういう訳か街の門全てが閉じられたって、大騒ぎになっています!」
「なんですって!?」
思わず、ド・ブラン夫人は声を上げた。
☆ ☆ ☆
ハルケギニアの都市は、基本的に都市の周りを城壁で囲み、正門や裏門といった門からしか行き来できないような構造になっている。
衛兵が、、朝になれば門を開け、夜になれば門を閉じる。
旅人や行商人は、何とか日暮れまでに衛兵から許可を得て都市に入らなければ、門の前で夜を明かさなければならなくなるのだ。
その門が、日も出ているというのに閉じたまま、という事は、明らかに異変を現していた。
事件は、アントワッペン市正門で起こった。
普段なら市内の大聖堂の鐘が鳴ると、それを合図に正門と裏門が開けられる。
だが、大聖堂の鐘が鳴っても門が開く気配が無かった。
人々、特に商人たちは口々に『おかしいおかしい』と、言い合っている。
痺れを切らした商人の何人かは反対側の裏門から出ようと、馬車を引いて裏門ヘ向かったが、裏門でも同じ事が起こっていた。
「衛兵は何してるんだ! 早く開けろ!」
「今日中に納品しないと大損害なんだ!」
怒りが頂点に達した。
正門前では千人を超す人々が集まり、暴動寸前だった。
一方、門の外でも、アントワッペンに入城する為に夜を明かした人々で混雑が出来始めていた。
「なぁ? どうして開けちゃダメなんだ?」
「領主様が、何があっても絶対に開けるな……って、御触れが来てるんだよ」
衛兵たちも、この異常事態にどうするべきか苦慮していた。
このまま、いた
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