機動戦艦ナデシコ
1252話
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そのまま男のすぐ近くに到着すると、そっと背広の中へと手を伸ばす。
勿論この手の騒動にはあまり関わってきた事がないだろう整備員には見えないようにしてだ。
そうして取り出したのは、拳銃。
自分の武器を奪われているというのに、男は俺の殺気により動く事は出来ずにいる。
「一応言っておくけど、俺はこういう事が出来る人間だ。迂闊な真似をしないようにした方がいいと思うぞ?」
笑みを浮かべつつ、拳銃を握る手へと力を入れていく。
その手は動きが止まる事がないまま、バキバキといった音を立てて拳銃を砕いていく。
……ん? この拳銃金属製じゃなくて樹脂素材か何かだな。
確かに樹脂素材もそれなりの硬度はあるが、金属を握り潰すといったパフォーマンスには向いていない。
「さて、じゃあこれは返すから、交渉の場に案内して貰おうか。それと、言っておくがこの機体に手を触れないようにな。もし勝手に手を出したりしたら……さて、どうなるだろうな?」
「……うむ」
俺の言葉に受け取った拳銃の残骸へと一瞬視線を向けるものの、次の瞬間にはその残骸をポケットの中にへとしまいこむ。
取りあえず俺が生身でも簡単にどうにか出来るような相手ではないというのは、これで理解出来た筈だ。
男はそのままさっきミロンガ改を見た時に思いきり騒いでいた男の下へと向かい、何かを言い聞かせる。
今の話の流れから考えると、あの男が整備員を纏めているんだろう。
言動を考えると、色々と調子に乗りやすい奴に見えるけど。
実際、男が何かを言い聞かせているのに対して、酷く興奮して言い返している声が聞こえてくる。
典型的な技術馬鹿って奴か。
それでも最終的には男の迫力に押されるように強引に納得させられ、渋々とではあるが男の要望――ミロンガ改に手を出すな――に納得していた。
そうして整備の者達に言い聞かせると、戻ってきた男は改めて俺の方へと視線を向けて口を開く。
「こっちだ」
「ちょっと待った」
俺の呼び掛けた言葉に、男の顔は再び強張る。
また何かするとでも思ったのか?
いやまぁ、ここまでやらかしておいたんだから、それはしょうがないけど。
「まだ何か?」
「名前くらいは教えてくれてもいいんじゃないか? お前がここに来たって事は、多分俺の世話係や案内係みたいなもんなんだろ? 知っての通り、俺はアクセル・アルマーだ」
「ゴート・ホーリーだ。よろしく頼む。では、そろそろ会談をする場所に案内したいのだが、構わないか?」
「頼む」
なるほど、ゴート・ホーリーか。
ここは日本だし、テンカワも日本風の名前だった。
テンカワにユリカとか呼ばれていた女も、響き的に日本語だろう。
だが、この男の名前は日本風のものではない。
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