二十五話:観戦
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見舞われたとしよう。
二人も例外に漏れず飢えに苦しみ、後一日何も食べなければ死んでしまう状況となる。
そんな時に二人の前に食料を持った人間が現れる。
当然二人は食料を分けてくれるように頼む。しかし、その人間はこれは自分の分だと断った。
善人は善人であるがゆえにそれを受け入れ次の日に餓死した。
しかし悪人は悪人であるがゆえに食料を力づくで奪い取り生き延びた。
正しいのは善人だ。だが、結局生き延びたのは悪人だけ。
真に正しい者が死に、悪をなしたものだけが世界で生き続ける。
そんなことがこの世界では絶えず起こっている。
こんなものが、こんな世界が本当に正しい世界だというのか。
そもそも衛宮切嗣という男の生き方自体が自分以外の人間の死を加速させる悪だ。
だというのに善人を殺して悪人である衛宮切嗣はのうのうと生きている。
こんなものが正しいはずがない。生きるべきは、報われるべきは真に正しい者であるべきだ。
しかし、世界が生き残らせるのはいつだって悪人だ。
そんなことしか起こらない、起こせない世界ならば―――壊してしまった方が余程マシだ。
「この世界で誰もが幸せになれないのなら誰もが幸せになれる世界を創ってしまえばいい。君もそう思ったからこそ今私に手を貸してくれているのだろう?」
「……僕は犠牲になってきた者全てが報われる世界が欲しいだけだ」
「そう! 君は誰よりも美しい願いを抱いているが故に理解されない。だが、私は知っている。その願いこそが真に世界を救うものだとね。だからこそ、私は肯定しよう―――」
興奮で息が上がりながらも一切休むことなく喋り続けるスカリエッティだったがここにきて溜めを作る。
その目はあり得ないほどの狂気と光に満ち溢れ人間のそれとは到底思えなかった。
「―――衛宮切嗣には望む世界を創り出す権利があると」
その言葉にも切嗣は何も言うことなくジッとスカリエッティに視線を返すだけである。
しかし、スカリエッティの方はそれだけで何かを感じ取れたのか満足気に嗤う。
不気味なまでの沈黙と歪んだ空気。その状況が永劫のように続くかと思われたところでウーノから通信が入る。
「ドクター、刻印ナンバー9が護送体制に移されました。いかがなされますか?」
「おっと、つい話に夢中になっていて気づかなかったよ。これで賭けは私に勝ちだね。頼まれごとに関しては今度また話そう」
「ちっ……分かった」
すっかり忘れていたとばかりに目を見開きながら自身の価値を宣言するスカリエッティ。
切嗣はそれに苛立ちを隠すこともなく舌打ちをするが約束を破ることはなかった。
そんなやり取りをしている二人にウーノは呆れることも、怒ることもなく指示を促す。
「ドク
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