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八神家の養父切嗣
二十五話:観戦
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のも彼にとっての楽しみである。
 例えば隣にいる世界全てから争いを無くそうとしている愚か者や、死に行く少年を救おうと決死の想いで飛び降りる少女のような者が。

「キャロ・ル・ルシエが飛び降りた? いや、A(アンチ)M(マギリング)F(フィールド)から離れるためか」
「ふむ、やはり閉鎖された空間以外だと逃げ道が簡単に確保されてしまうか。今後に生かさなくては」

 キャロが飛び降りていく姿にも二人は特に動揺はしない。
 何故なら、キャロには空で戦うための能力が備わっていることを知っているからである。
 逆にそれを知らないスバルは自身も飛び降りて助けに行こうとしてティアナとツヴァイに止められていた。

「召喚術、中々に厄介な能力だな」

 キャロとエリオ、そしてフリードがピンク色の光に包まれて消える。
 光が消えて再び彼らが姿を現した時には、フリードはその姿を巨大な竜に変えていた。
 アルザスの竜召喚を得意とするキャロは対人戦を主とする切嗣にとっては気の抜くことのできない相手である。
 それ故に新型のガジェットに再び立ち向かっていく姿に鋭い目を向ける。

「ふふふふ、やはり劇にはこういった見せ場が無ければ面白みがない。そうは思わないかい?」
「僕としては任務は何事もなく終わるのが一番だよ。お前ほど狂ってはいないからね」
「やはり、私の美意識は理解されないかい。まあ、いつものことだがね」
「お前を理解できる人間が何人もいる世界など終わっているだろう」
「くはは! それを君が言うかね、衛宮切嗣。君も―――他者に理解されることなどないだろう?」

 ―――決して理解されない。
 その言葉が切嗣の心に重くのしかかった。
 ベクトルは違うが切嗣もスカリエッティも他人に理解されることのない願いを抱いている。
 欲しくもない共通点がお互いの本質の部分に存在する。
 切っても切れない縁があるのは恐らくはその似通った部分のせいなのだろう。
 そして、どちらも理解されることがなくとも諦めることをしない。
 理解されないのなら、理解される世界に作り替えてしまおうと狂った願いを抱く。
 二人が歪んだ人間であることは疑いようがない。

「私達は常々思っている。この世界は間違っているとね。世界を変えるよりも自分を変えろ? そんなものは詭弁に過ぎない! 変えられるものか! 己の本質が、魂の形が変えられるものか! 私達にとっては呼吸のように当たり前のものを変えられるものか! 変わるべきは私達ではない、世界の方だ!!」

 例えばの話をしよう。
 盗みも、暴力も侵さない清廉潔白な善人とそれを平然と行う悪人。
 百人に聞けば百人が前者の方が正しく生きるべき人間だと言うだろう。
 だが、この二人の住む国が、世界が、大飢饉に
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