34:笑わせないで
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……
「……やれやれだよ。ボクの手助けだなんて、マーブルも……なんにも分かってなかった。……本当に、笑えない」
溜息をつきながらそう言うと、何事も無かったかのように此方を向いた。
それを見たアスナは……
「……って人は……!」
何かを呟きながら、手に持つレイピアを握り締めて細かく震わせていた。
まさか……
「おいアスナッ、待っ――」
「ユミルッ!! あなたって人はァーッ!!」
激昂したアスナは俺の制止の声も聞かず、ユミルへと猛然たる勢いで疾駆した。
するとユミルは隣に倒れるマーブルの服を掴むと、アスナへと向かってぶんっ、と放り投げた。
「なっ……!?」
目の前に飛び込んできたマーブルの体にアスナは彼女を抱きかかえる形で急停止した。ユミルはその隙を狙い……
「しまっ――あづっ……!?」
再び投擲した麻痺毒ナイフの刃が、アスナの剥きだしの肩口を抉った。そして彼女も膝から崩れ落ち、マーブルの隣で倒れる形で動けなくなる。
「危なかった、かな。でも、まぁ……最後にマーブルも役に立ったね。アスナはすごく厄介だったから。今までで一番『スキル』を使わされて、随分と『削られた』よ……。流石は攻略組トップクラスのプレイヤーと言ったところかな」
「ユミル……お前っ……!」
俺は剣の柄を握り締め、ユミルと対峙する。彼もまた、黙って大鎌の刃を上段に掲げ上げた。
……が、その時だった。
ぎゅるーっ! という鳴き声が聞こえた。
振り向くとその声は、麻痺で倒れているシリカの傍らでじっとしていた小竜……ピナのものだった。
「ピナ……ダメッ……!」
だがピナは主人の声を聞かず、その場でパタパタと飛び立ち、再びぎゅるるーっと叫んだ。そのくりっとしていた赤い目は、今は怒りにキッと細められ、涙で潤んでいるようだった。
「……………」
ユミルはそれを見て、大鎌を降ろし、俺を一旦無視して数メートル先のピナと向き合った。
ふと、その横顔が……ごく薄く、ほんの僅かに、自嘲的に微笑んだ、気がした。
「ピナ……ボクが憎いかい……? キミと、キミの主人を裏切った、このボクが……」
ぎゅるうーっ! とピナはユミルを睨んで鳴き答える。だが、それだけだ。その場で羽ばたくだけで、ピナは攻撃する事も、逃げることもしない。
「……そっか」
するとユミルは、ざくっと大鎌をその場の地面に突き立て、何も持たない両手を左右に広げ、ゆっくりとピナに向かって歩き始めた。
距離が縮まるたびにピナは何度も大きな鳴き声を上げて威嚇するが、ユミルは歩みを緩めない。そしてあと数歩まで近付いた瞬間、ついにピナがバブルブレスを至近距離のユミルの体に向けて吐き
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