34:笑わせないで
[16/17]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
次から次へと、言葉を俺達に向けて吐き出す。
「――心地、よかった……!!」
ユミルは、叫ぶたびに震える瞼で、目を潤ませていた。
<i140|7750>
「マーブルと一緒に宿で過ごした半年間、ボクはこの世界で初めて、安らぎを知った……!」
マーブルの、あの優しく柔らかな微笑みのもとで過ごした日々。つい一昨日の夜では、ついに心を開いたユミルは彼女に寄り添いながら眠り。
「そして、キリト達がボクを見てくれる目は……優しくて、眩しくて……胸が苦しくなるくらい……とても、温かくてっ……」
宿で俺達と共に話し合ったり、いがみ合ったり。時には決闘し、共に戦い、そして涙を流すくらい心を動かされた、あの日の晩餐。
「ボク、この世界で長い間、ずっと一人だった……。だけど、マーブルと出会って……ボクはここに居てもいいんだって、そう思えた……! キミ達と一緒に過ごして、人をまた信じてみようって、心の底からそう思えた……!! 思えたんだよっ……!?」
――ユミルは、泣いていた。
ついに堪えきれなくなった大粒の雫が、次から次へと頬を濡らしていた。
「うっ……ひぐっ……」
彼は突き立てた大鎌から手を離し、胸元をぎゅっと握って、隠すように顔を伏せる。
それはまるで、次から次へと込み上げる温かな想いを塞き止めるように。
はたまた、あたかも見えない血が溢れ流れる心の生傷を押さえ付けるように。
「ユミルッ……! だったらもう……!」
「もう止めて……! これ以上は、もう……あなた自身を傷付けるだけだわ……!」
「うっ、うっ……ユミルさん……」
「今ならまだっ……まだやり直せるわっ、ユミル!」
俺やアスナ達が手を差し伸べるように次々に言葉を投げ掛けるも、顔を上げたユミルの表情は……
悲しみと、憎しみが織り交じった泣き顔だった。
そして俺達の言葉をかき消すように……
「――だからこそ! ボクはっ、キミ達が憎くて憎くてたまらないっ!!」
そう叫んだ。
「ボクはもう、こんな気持ちになりたくなかったから一人になったのに!! だから誰も信じようとしなかったのに!! それなのにキミ達は……何度もボクに手を差し伸べてっ……! どうせこうなる運命だと分かっていたのに、少しとはいえボクは……キミ達を、信じてもいいと思ってしまった!! 心の内を……見せてしまった……!!」
頬の涙を拭うことなく、俺達を見回す。
「……だからボクは、心の底から一緒に居たいと思えるキミ達が、心の底から憎い……憎いよっ!!」
それからユミルは、手の回廊結晶を、此方を向いたまま背後へと空高く放り投げた。
「
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ