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ソードアート・オンライン リング・オブ・ハート
34:笑わせないで
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次から次へと、言葉を俺達に向けて吐き出す。


「――心地、よかった……!!」


 ユミルは、叫ぶたびに震える(まぶた)で、目を潤ませていた。



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「マーブルと一緒に宿で過ごした半年間、ボクはこの世界で初めて、安らぎを知った……!」

 マーブルの、あの優しく柔らかな微笑みのもとで過ごした日々。つい一昨日の夜では、ついに心を開いたユミルは彼女に寄り添いながら眠り。

「そして、キリト達がボクを見てくれる目は……優しくて、眩しくて……胸が苦しくなるくらい……とても、温かくてっ……」

 宿で俺達と共に話し合ったり、いがみ合ったり。時には決闘し、共に戦い、そして涙を流すくらい心を動かされた、あの日の晩餐。

「ボク、この世界で長い間、ずっと一人だった……。だけど、マーブルと出会って……ボクはここに居てもいいんだって、そう思えた……! キミ達と一緒に過ごして、人をまた信じてみようって、心の底からそう思えた……!! 思えたんだよっ……!?」


 ――ユミルは、泣いていた。


 ついに堪えきれなくなった大粒の雫が、次から次へと頬を濡らしていた。

「うっ……ひぐっ……」

 彼は突き立てた大鎌から手を離し、胸元をぎゅっと握って、隠すように顔を伏せる。
 それはまるで、次から次へと込み上げる温かな想いを塞き止めるように。
 はたまた、あたかも見えない血が溢れ流れる心の生傷を押さえ付けるように。

「ユミルッ……! だったらもう……!」

「もう止めて……! これ以上は、もう……あなた自身を傷付けるだけだわ……!」

「うっ、うっ……ユミルさん……」

「今ならまだっ……まだやり直せるわっ、ユミル!」

 俺やアスナ達が手を差し伸べるように次々に言葉を投げ掛けるも、顔を上げたユミルの表情は……
 悲しみと、憎しみが織り交じった泣き顔だった。
 そして俺達の言葉をかき消すように……


「――だからこそ! ボクはっ、キミ達が憎くて憎くてたまらないっ!!」


 そう叫んだ。

「ボクはもう、こんな気持ちになりたくなかったから一人になったのに!! だから誰も信じようとしなかったのに!! それなのにキミ達は……何度もボクに手を差し伸べてっ……! どうせこうなる運命だと分かっていたのに、少しとはいえボクは……キミ達を、信じてもいいと思ってしまった!! 心の内を……見せてしまった……!!」

 頬の涙を拭うことなく、俺達を見回す。


「……だからボクは、心の底から一緒に居たいと思えるキミ達が、心の底から憎い……憎いよっ!!」


 それからユミルは、手の回廊結晶を、此方を向いたまま背後へと空高く放り投げた。


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