34:笑わせないで
[2/17]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
まま……人を信じられないまま、永い時を冷たい牢屋の中で過ごす事になる! 私はそんなの、耐えられないっ……!」
マーブルは叫びながら、片腕の袖で涙を拭う。しかし、その悲しみの表情までは拭われない。
「そんな……そんなことをする位ならっ……! いっそ私はあなた達を……!」
「なんで、そこまでして……」
俺の呟きに、マーブルは視線と共に此方へと大鎌の刃を向けた。
「私には、今までこの子の傍にいて保護してきた責任がある……! そして、死神と気付けず、ずっと看過し続けてしまった責任があるのよ! だから、この子の罪も、全て私一人が背負うわ……! そして最後に、この子を変えてあげられなかった私は、この身を犠牲にしてでも、せめてこの子が自分の思うように自由に生きさせてみせる……。それが例え、犯罪者の道であったとしても……!」
そして彼女は、喉を微かに震わせながら、大きく息を吸って言った。
「――全ては、ユミルを守る為……!!」
そこには、狂おしいまでの庇護と慕情、慈悲すら織り交じった涙で頬を濡らす、一人の保護者……いや、母親がいた。
「……マーブル」
ここで、それらをずっと黙って聞いていたユミルが、自分を庇う位置にいる彼女の背中へ向かって歩みだし、そしてその横に並んだ。
マーブルは慌てて手の甲で涙を拭って顔だけ振り向く。
「ユミル……今すぐここから逃げなさい。この場は私が全力で食い止める。私の事は気にしなくていいから、この隙に少しでも遠く――」
「――笑わせないで」
その時。
トスッ、という、乾いた音が聞こえた。
「…………え?」
マーブルはきょとんとした表情と同時に手から大鎌を落とし、片膝をついた。
ユミルが、空いた片手を真横へと振り払う動作をしたと思った瞬間。
マーブルの太腿に、ユミルのスローイングナイフが突き刺さっていた。
「……な……」
彼女のHPは数ドット減り、緑色の明滅する枠に覆われていた。状態異常ステータス、麻痺毒に侵されていた。
「なんで……うっ!?」
ユミルはそれだけに留まらず、震える体で振り向こうとしたマーブルの首筋の裏を、手刀で叩いた。人が昏倒する急所だ。
「なんで、だって……? ボクは最初から、ずーっと前から言い続けてるじゃない……」
崩れゆくマーブルに向けて、ユミルは先程以上に冷徹な目で彼女を見下ろし、低い声で言った。
「――――ボクは、誰一人も信用なんかしちゃいない、ってね」
「…………ユミ、ル……」
一瞬、マーブルは彼へと手を伸ばしかけ……そして気絶し、バタリとその場に倒れた。そして動かなくなる。
ユミルはそんな彼女を数秒見下ろし
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ