第一章
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エレンゲレクキ
ロシアの東、極東のところにアムール川という川がある。かなり大きな川でありその流域には寒冷地だが人も住んでいる。
その中にナナイ族という人達がいる、彼等のことを聞いてだ。
ロシアの地理学者セルゲイ=グローニスキーは同僚のワリコフ=グルシチョフにこんなことを言った。
「確か人口は一万」
「そう、中国側に四六〇〇人程のね」
「所謂少数民族だね」
「そうだよ」
グルシチョフはこうグローニスキーに話した、二人は今そのアムール川流域に鉄道で向かっている。帝政ロシアの頃に敷かれたシベリア鉄道だ。見ればグローニスキーは黒い髪と瞳で四角い顔の長身で鼻が赤い。グルシチョフは砂色の顔に灰色の瞳だ。背はグローニスキーと同じ位でやはり高いが恰幅がよく顔は細長い。二人共ウォッカを飲みながら話をしている。
「アジア系のね」
「そうだったね」
「僕達は地理学者でね」
「そのそれぞれの地域の風俗習慣も研究しているからね」
「今回はウラジオストクの海面の調査だけれど」
「彼等のこともね」
「調査の予定があるよ」
そのナナイ族のというのだ。
「現在の段階でね」
「そうだね」
「とはいっても」
ここでだ、こうも言ったグルシチョフだった。
「僕もね」
「ナナイ族についてはね」
「彼等に入ることは」
「はじめてだね」
「学術的な調査にしても」
それでもというのだ。
「現地に入るのははじめてだよ」
「さて、どんな人達か」
今度位はグローニスキーが言った。
「行ってみようか」
「そうだね」
「どうもね」
また言ったグローニスキーだった、今度の言葉は。
「学者にしてもね」
「ああ、上から目線でだね」
「調査、学術的な研究をする人がいるね」
「いるね、人種主義とかが入って」
「ロシア人中心主義かな」
ソ連にあったそれだ、共産主義は平等を謳っていたがやはりこうしたものは存在していたのである。
「それがね」
「まだあってね」
「だからだね」
「彼等への調査もね」
「あるね」
どうしてもというのだ。
「それが問題で」
「僕達もだね」
「上から目線で偏見を入れない様に」
「現地調査をしないとね」
「そこは気をつけないとね」
二人でウォッカを飲みつつも学者としてどうあるべきかも話した、そのうえで彼等はまずはシベリア鉄道の終点であるウラジオストクに着いた。
そしてだ、極東ロシアの海面を地理学者として調査してだった。
二人でアムール川流域に向かった、そこでだった。
ナナイ族の村に来た、そこにはロシア風の住居が並んでいた。
その家々を見てだ、グローニスキーはグルシチョフに言った。
「そういえば」
「そう、ナナイ族はね」
「かつては
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