Vivid編
第六話〜停滞と胎動〜
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受け入れろと言われた。そして日常生活を送る中で、様々な自分を直視してきた。
だが、早々に自身のあり方を変えるなど土台無理なのは当たり前のことだ。
結果的に、自身の中で何かしらの結論を迎えるか、そのあり方を根本的に変える何がしかの外的要因がなければ、ライの根幹が変わることはない。
その為、臆病であることを理解しつつもライは停滞を選んだのだ。
「――――」
ライの言葉にユーノは何かを言おうとしても口を開くことはできない。そもそも何を言えばいいのかすら分かっていないのに、口を開いたところで何ができるわけでもないのだが。
しかし、それでも彼は今にも折れそうなライの姿が数年前に墜ちた彼女の姿を彷彿とさせいてもたってもいられない感覚を覚えていた。
「僕には彼女を……彼女たちを愛し、支えて行くことはできません」
「そんなこと――――」
ライの言葉にハッとし、ユーノは咄嗟に反応しようとするが、また変わっていたライの表情に息を呑む。
「貴方のようにキチンと彼女たちを見てあげることができる人がいるべきです」
「そうじゃない」と叫ぶことができればどれだけ楽か、ユーノは自分の勇気のなさに嫌になる。
ユーノは幼い頃からなのはを支えることしかできない自分が嫌いであった。
でもそれは自分にしかできない部分もあると信じて、彼女を想うが故に誇りにも思っていたことでもあったのだ。
だが、今目の前にいる自身の想い人が想う男性と比べてどうだ。
大切であるからこそ突き放す。
大好きであるからこそ、自身は嫌われてもそれを成し遂げる覚悟を持つ。
それだけの強い意志を見せ付けられた。
自身の誇りなど、彼女に嫌われないように必死でやっている自己満足としか思えなくなってしまう。
それを頭で理解してしまったユーノは自分の言葉がとても軽く、そして薄っぺらなモノに思えて酷く恥ずかしかった。
何より、それを本当に心から望み、彼女どころか自身の幸せを願い、そして祝福するような――――安堵するような笑顔を向けてくるライに訳もあやふやなまま頭を下げて楽になってしまいたい衝動に駆られる。
「守りたい人が居れば、例え本人を傷つけても助けようとする僕は、恐らく狂っているのでしょう」
ライの独白は続く。
「それと、資格云々以前に僕は汚れすぎている。そんな僕に彼女たちのような純粋な人たちを抱きしめることはできません」
ライは自身でも気付かないうちに“何”で汚れているのかを口にはしなかった。
「…………喋りすぎましたね。僕はもう戻ります」
一言断りを入れると、ライは未開封の缶を持って、作業場に戻っていく。
ユーノは呆然とライの背中を見ていることしか出来なかった。
「…………………………
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