Vivid編
第六話〜停滞と胎動〜
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平坦な言葉が出てくる。それがどこか怖くて、でも逃げることもできないため、ユーノは手を突き出して、一度ライの言葉を止めた。
自身を落ち着かせるために、今度こそココアの缶を開封し少しだけぬるくなったそれを口に流し込んだ。
「……君はなのはの――――いや、彼女たちの気持ちに気付いているの?」
「……」
ユーノの問いにライは無言と閉眼する事で返事とした。
そんなライの態度にユーノの中で沸々と湧き出てくる感情があった。それは苛立ちである。
「君はどうして彼女たちを愛さない?全員を愛せと言っているのではなく、どうして一人を選んで愛す事をしない?」
もしここで今の関係を壊したくない等と日和見な言葉を吐けば、ユーノはライを許さないだろう。だが、返ってきたのは、ユーノの想像とは違った。
「……僕は――――『私』は大切なものを守るためであるのなら、その大切なものを傷つけることも厭わない」
「――――ん?」
言葉の意味は理解できる。だが、彼の言葉が矛盾しているのを理解できるからこそ、ユーノはライの言った言葉を理解できないでいた。
「愛した誰かを守ろうとして、私が行動を起こすとする。だが、その人を助けるためにその人“だけ”を助けるのでは意味がない。守るのであればその人の周りも一緒に守らなければ意味がない」
そういうライの言葉はどこか自身に言い聞かせるような物言いであった。
ライは結末までは知っているが、ゼロレクイエム以降の皇歴の世界を知らない。無論推測はできるし、元々考えていた予定よりもより幸福を掴んでいる誰かがいるかもしれないとも考えることができる。
だが、もう戻らないものがあるものも噛み締めている。
ルルーシュやナナリーがアッシュフォード学園で送っていたような不自由ではあるが、当たり前の幸せを感じる生活を二人はもう送ることはない。
スザクは例え、全ての人間が枢木スザクという存在を忘れたとしても、もう二度と英雄であり続けるための仮面を外すことはない。
言い出してしまえば切りがないが、結果として彼や彼女たちが望んだ世界は確かに創られ維持されていくだろう。だが、その作った本人たちが様々なものを亡くしてしまう方法に誰が“最善”などと評価できるのだろうか。
「彼女たちの望むものを叶えてやることは全てできるとは言えないが、粗方のことはできると思う。だけどそれを叶えるために犠牲を払うことを厭わない僕に彼女たちを愛する資格があると思いますか?」
ライの顔が自嘲に歪む。
だがそれはどこか泣き出すのを我慢するような子供のようであった。
ペラペラと軽く口にしているように感じるライの内心では、言葉にするには難しい葛藤が多くある。
彼はゼストに過去であれ、今の自分であれ、ありのままを
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