Vivid編
第六話〜停滞と胎動〜
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無限書庫
静謐な空間に浮遊する二人。
どちらも動かないため、それは遠目に何かの写真や絵を連想させる。唯一動いている、男性にしては長い二人の髪が揺らいでいるために、それが静止画ではなく現実に二人がそこに存在している事を証明していた。
「……場所を移しましょう」
少しの間続いていた沈黙を破ったのは二人のうち、問いを投げかけられたライの方であった。先程までユーノを気遣うような表情をしていた彼の顔から、既にそう言ったモノは抜け落ちている。
その人間味が失せたライに理解できない怖さを感じながらも、ユーノは移動を始めたライに付いて行くしかなかった。何故なら口火を切ったのは彼自身なのだから。
「……どちらにします?」
無限書庫を出て、その施設の休憩スペースに出る。そこの自動販売機で、ホットココアとホットレモネードを買ったライは、ユーノに尋ねた。
無言でホットココアを受け取ったユーノを連れ、休憩スペースの窓際の端の丸机と椅子のある方に向かう。
平日ということもあり、その辺が一番人の少ない場所であった。
机を挟み、向かい合うように座る二人。しかし、その二人の表情は対極的である。
方や緊張をした顔、方や感情が抜け落ちたような顔。傍から見れば何かの面接か、若しくは何かの催促に来た経営者と消費者にしか見えない光景である。
そして二人の話し合いは始まる。
「確認します」
「っ」
「貴方が訪ねたのは、僕が高町なのはのことを『異性』としてどう想っているかですね」
確認の為の言葉はすんなりとユーノの耳に入り込み、あっさりと彼の質問を理解させる。
こんな時に冷静に思考できる自分の頭に感謝すればいいのか、それとも少しは慌てればいいのにと文句を言えばいいのか、ユーノは少しだけ混乱していた。
「そう、です」
肯定の言葉を喉から出すのに苦労する。いつの間にかカラカラに乾いていた喉を潤すために、ユーノは受け取ったココアの缶のプルタブに指をかけた。
「……その問いに簡潔に答えるのであれば…………いえ、はっきり言いましょう」
指をプルタブに掛けたままの格好で、ユーノはライの言葉を受け止めようとする。だが、次に出てきた言葉をユーノは即座に理解出来なかった。
「ありえません」
息を、飲んだ。
同時にプルタブに掛けていた指がすべり、『カンッ』と言う硬質な音が響く。
そんなユーノの反応などお構いなしに、ライは言うべきことを口にしていく。
「僕が彼女を受け入れることはない。それは誰であれ同じです。寄り添うことはできる。話すことも分かり合うことも命をかけることもできる。だが、女性として愛すことはできない」
「ちょっ、ちょっと待って」
どこまでも
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