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アインクラッド篇
断章 南十字の追憶
滅びの序章

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sight《死神》
渇く、喉が渇く。



水?あんな味気ないものじゃ足りない。



血だ、血を呑みたい。啜りたい。



声がする。笑い声、獲物の声だ。



息を潜めて近付く。静かに、ゆっくりと。



相手に最大限の恐怖を与えるその瞬間を待つ。それが《死神》の流儀だ。



さあ殺そう、楽しいパーティーの始まりだ。






sight三人称
二十四層迷宮区、安全地帯の小部屋でとあるパーティーが一息ついていた。服装から《軍》のプレイヤーと知れる。練度も高そうだった。

「ひー、疲れた疲れた。」

「もう一息だ。後少し頑張ろう。」

時刻は深夜。彼ら《軍》のプレイヤーは交代でほぼ24時間体制で探索している。

「あとちょっとでボス部屋だもんな。」

「ああ、勢いで偵察いっちまうか?」

アハハハ、と笑い声が響く。そんな中、リーダー格のプレイヤーが立ち上がった。

「よーし!お前ら、休憩終わり!そろそろ………」

続きを言うことは出来なかった。パーティーメンバーも、彼自身も、彼の胸を音もなく貫いた槍の穂先に釘付けになっていた。

「………え?」

HPバーがみるみる減少し、イエローを通り越し、レッド、そしてゼロへ。
儚い破砕音を残して、リーダーは永遠にこの城を去った。

「ウフフフフ。さあ、パーティーの時間ですわ。」








sightアマギ
朝、俺は普段より早い時間に起こされた。アラームではない。メールだ。

「誰だよ朝っぱらから……。」

差出人は《鼠》のアルゴ。しかし、情報屋連盟の名義になっている。内容は………

「………嘘だろ?」

迷宮区で、《軍》のワンパーティーが全滅。それも殺人とのことだった。








小一時間後
集められるだけ集めた情報によると事件の概要は



・昨夜遅く、安全地帯で休憩していた《軍》のパーティーが襲撃された。

・パーティーの内五人が死亡。一人だけが何とか逃げ切った。

・逃げ切った一人によれば、襲撃者は少女。自らを死神だと名乗る。使う武器は槍。

・襲撃者は、パーティーリーダーを一撃死させた。

・襲撃者の攻撃には、実際に痛みが伴った。



とのことだった。取り敢えず姉と妹を起こそうと立ち上がりかけた時、部屋のドアが勢いよく開いた。

「アマギ……大変よ………アマナが居ないの!?」

何かが、音を立てて崩れ始めた。
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