暁 〜小説投稿サイト〜
魔法少女リリカルなのは 〜優しき仮面をつけし破壊者〜
StrikerS編
109話:『星々(れきし)』(前編)
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 右手に力が籠められる。それが臨界点に達した瞬間……


 ―――龍の咆哮が、響き渡った。















『命を懸けてでも、叶えたい「願い」ってある?』


 龍が吠える中、男の声が聞こえてきた。
 横から聞こえる、視線を向けると、何処か柔らかい雰囲気を纏う男がいた。

 その男を、自分は見たことがある。自分の信じる『願い』の為に、戦い続けた人だ。
 あぁ、そうそう。質問に応えなければ。


「ある。―――だけど、『命を懸けてでも』っていうと…ちょっと違うかな」


 質問の返答に、男は驚いた様子を見せる。
 だって自分の部下に、生きて帰って来いなんて言ってしまったんだ。自分だけ命を投げ出して戦ったら、示しがつかないでしょ?

 確かに叶えたい『願い』はある。それは誰にも真似できない、自分が抱いた夢であり、希望あり―――現実にしたい願いだ。
 だけどそれは、あいつら≠ニ一緒に叶えたいものだ。だからこそ、自分は生き残る必要がある。


「都合が良すぎるかもしれないけど…」
『それでも、君の周りには君を慕う人達がたくさんいる筈だ』


 それは君自身に―――君の心に、しっかりとした芯があるからだ。
 そうじゃなきゃ、君の言うことなんて誰も信じない。誰も付いて行こうなんて考えない筈だ。


『君なら―――君達なら、きっと叶えられるよ』


 男は少し悲しげに言うと、笑みを浮かべ気合を入れるように顔の前でグッと拳を握る。
 すると男は光へと変わり前へ、バックルの宝石へと吸い込まれる。

 ―――また一つ、炎≠ェ灯った。


「…あなたも、紛れもない英雄(ヒーロー)≠ナしたよ」


 笑みを浮かべて、前を見据える。
 宇宙のような黒い空には、また一つ星が光った。周りには12の星と、更に小さい星々が並ぶ。その様はまるで龍のようで、無限の字を描く命≠フ星々だ。

 ―――輝く星々から、いのちの音がなった。















「だああぁぁぁぁッ!」


 引き絞られた右拳が、突き出される。
 その瞬間、やっと立ち上がった男に巨大な火球が襲い掛かった。
 男の姿が火炎に包まれる。それが消えるとそこには、片膝をついて息を上げている男の姿があった。

 対し火炎を放った張本人。突き出した右拳には、口を開いた赤き龍の頭部が。
 拘束していた鎖は炎で溶け、体は赤く染まる。黄色かった複眼は、鉄仮面のようなスリットの入ったシルバーのバイザーで隠れ、頭部には龍の紋章が描かれている。

 厳しいバトルロワイヤルの中でも、自分の信じる願いを追い求め戦い続けた戦士の姿……


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