第173話 総攻め
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褒美だ」
正宗は魏延に言った。魏延はしばし短剣を凝視し正宗を見た。
「車騎将軍、これはお預かりさせていただきます」
魏延は正宗に近づき彼の前で平伏した。
「車騎将軍、お願いがございます! この魏文長を家臣にしてください! 身分賤しき身ですが車騎将軍にお尽くしいたします」
魏延は正宗に懇願した。正宗は魏延に近づくと腰を落とし肩に手を置いた。
「その言葉嬉しいぞ! 魏文長、この私の家臣となれ!」
正宗は嬉しそうに魏延に声をかけた。
「私の真名は『焔耶』です。よろしくお願いします」
「焔耶、私の真名は『正宗』だ」
「正宗様!」
魏延は心底嬉しそうに正宗のことを見つめていた。
「焔耶、お前は部下を連れ一旦下がれ」
「いいえ、できません。私の手下はここから下がらせますが私は正宗様から離れません」
正宗は苦笑した。
「無理をするな。傷の治療に専念せよ」
「大丈夫です。私は頑丈なのが取り柄ですから」
焔耶はそう言い胸を張るが苦悶の表情に変わった。しかし、直ぐに平静を装い痛みを堪え空笑いをした。
「大丈夫そうではないではないか。主の命が聞けんか?」
「滅相もございません。分かりました」
焔耶は面目なさそうに肩を落とすと正宗に謝った。
「孫伯符の家臣にございます。清河王、お取り次ぎをお願いいたします」
正宗が焔耶と会話をしていると喧噪の中、孫堅軍の伝令が現れてきた。
「何事だ」
「清河王、吉報にございます。敵将・蔡徳珪の首級を主・孫伯符が討ち取りました」
「真か?」
「確かにございます」
伝令は正宗に間髪入れずに答えた。
「孫伯符が蔡徳珪の首を上げたか」
正宗の表情は微妙な表情だったが自分に言い聞かせるように何度か頷いた。
「趨勢は決したな」
正宗は淡々と伝令の兵に言った。彼は視線を上げ遠眼に映る内城を見た。内城からは煙が上がり火の手があがっていた。その光景を正宗はしばし凝視していた。
「孫伯符に『見事だ』と申し伝えよ」
伝令は正宗の言葉を聞くと拱手し足早に去っていった。その後ろ姿を正宗は見送った。
「孫伯符が蔡徳珪を討つとはな」
正宗は感慨深そうに独白すると、周囲を見回し蓮華と思春を見つけ視線を止めた。蓮華は思春にもたれかかっていた。
「蓮華、大丈夫か?」
正宗は蓮華に近づいていった。
「大丈夫でございます」
蓮華は正宗の顔を見ると気弱な声で返事したかと思うと、気分が悪くなったのか口を押さえ背を向け吐いていた。思春は心配そうに蓮華の背中をさすっていた。正宗が蔡和を殺した一部始終を見ていたのだろう。初陣の蓮華にはきつい光景だった
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