第173話 総攻め
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あることは辺りに転がる遺体が蔡瑁軍の兵士ばかりであることからも容易に理解できた。
「死ね――!」
正宗に襲いかかる歩兵の一団がいたが正宗を守備する騎兵によって斬りふせられた。その様子を見た蓮華は目を逸らし表情を青くしていた。
その時、正宗を守る騎兵を押しのけ突貫を仕掛ける騎兵がいた。
「車騎将軍、覚悟――!」
騎兵は怒号を上げながら身体中に矢を何本も受け血まみれに成りながら槍を振り回し正宗に襲いかかってきた。正宗は双天戟で槍の一撃を軽々と受け流した。
「手出し無用ぞ! 思春、蓮華を下がらせろ」
正宗は騎兵を睨むつけながら背後にいる思春に命令した。
「は!」
思春は蓮華の馬の手綱を握り正宗から距離を取っていった。正宗は蓮華達が下がったの確認すると騎兵に向けて叫んだ。
「余は総大将・劉正礼! 貴様の名は?」
「我が名は蔡和!」
蔡和と名乗った騎兵は兜から除く顔は女だった。年の頃は二十半ば。意思の強そうな目をしていた。身体中から鬼気迫る雰囲気を放ち正宗を憎しみの目で睨んでいた。既に死を覚悟しているだろう。正宗は蔡和から目を一瞬足りとも目を逸らさなかった。
「悪いが生かして逃がすことはできん!」
「こちらの台詞だ!」
蔡和と正宗は互いが話終わるのを待たず動いた。蔡和は槍を勢いよく振り回し正宗に襲いかかる。正宗も蔡和と相対するため馬を疾駆させ突撃した。二人が交差する時、正宗は双天戟で蔡和を突く。蔡和も槍を突くも正宗の突きで槍の軌道が逸れ、正宗の顔の横を槍が空振りした。両者はそのまますれ違い走り抜けた。
正宗は馬の速度を落としゆっくり回転し蔡和の姿を追った。蔡和は落馬し石畳の上に仰向けに倒れていた。正宗は双天戟の刃先に一瞬視線をやると、刃先が血で汚れていることを確認できた。彼が顔を上げると蔡和が先ほどまで騎乗していた馬が、主である彼女の元にゆっくりと駆け寄り、心配そうに頭を下げていた。
正宗は騎乗したままゆっくりと蔡和に近づいていった。彼が蔡和を馬上より見下ろすと、蔡和は正宗を睨み付けていた。
「殺せ」
蔡和は正宗を憎悪の表情で睨んだ。正宗は蔡和の馬に殺気を放ち下がらせると馬から降り双天戟を置いた。
「言い残すことはあるか?」
正宗は自分を睨む蔡和を見て声をかけた。
「天下がおまえを称えようと私はおまえを呪ってやる! 呪ってやるぞ!」
蔡和は血を吐きながら、血の気が無い蒼い表情で正宗に憎しみに満ちた言葉を吐いた。正宗は何も言わずに剣を抜き振り上げ蔡和の首に突き立てた。蔡和は苦悶の表情に歪みながら正宗のことを睨み続け息絶えた。正宗は蔡和から目を逸らすことはなかった。
「許してくれとは言わん」
正宗は哀しい目で蔡和の
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