第173話 総攻め
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軍が激しい抵抗を行なう理由は城内にいる身内のためだろう。正宗軍が東門を抜ければ、その先は身内が理不尽な暴力による餌食となる。だからこそ、彼等は命を賭して抵抗する。最早、蔡瑁のために命を賭ける者達は数えるほどしかないだろう。
前軍の後方に位置する長弓部隊から、蔡瑁軍の後方目掛け矢が一斉に放たれた。それに呼応するように盾部隊と長槍部隊が統率の取れた動きで盾の壁と槍衾を前へ前へと移動させた。長弓部隊は盾部隊と長槍部隊を援護するように間を空けずに矢を一斉に放った。
蓮華は正宗軍の整然とした統率された動きに感嘆していた。
「矢が連射されているように見えます」
蓮華は正宗軍の矢の運用に驚いていた。
「そう見えるだけだ」
正宗は蓮華は正宗に疑問に口を開いた。
「前軍の長弓隊は三隊編成だ。弓を放つ隊、次に弓を放つ隊、矢を番える隊と各々の隊が役割を順に変えながら矢を放つことで連射しているように見えているのだ」
「理屈ではそうですが兵の練度を維持するのは大変なのではありませんか?」
「それを実現するために専業の兵士を多く抱えている」
蓮華は正宗の言葉に驚いていた。この時代の兵士の主力は農民兵である。兵力不足を補うために傭兵を雇うことはあるが、専業の兵士を多く抱えることは少ない。理由は金がかかるからだ。専業の兵士となれば俸給を出さなければいけない。それを常時雇用するとなれば莫大な金が必要になる。
有力者であれば護衛のために子飼いの兵士を抱えたりするかもしれないが、その人数はたかがしれている。
蓮華は正宗の軍の運用方法と経済力に驚いていた。
「私は贅沢な生活など望まない。そんな金があるなら兵士の武器と防具、それに専業の兵士を増やす。地位があるから体裁は整えるがな」
蓮華が正宗を奇人のように思う視線を送っていたので正宗は自分の考えを吐露した。
「農民兵が役に立たないとは言わない。しかし、専業の兵士とでは忠誠心も心構えも違う。全兵力を専業の兵士のみで確保するのは流石に無理だがな」
正宗はしみじみと言った。
「母と姉も正宗様を見習って欲しいです」
蓮華は溜息をつき肩を落とした。彼女に視線を向けていた正宗が前方に視線を移動した。
「勝負ついたな」
正宗が呟くと彼の言葉通り、蔡瑁軍の動きが鈍くなってきた。前軍が勢いよく前に進み出す。
「泉! 兵を進めよ!」
「畏まりました!」
泉は正宗の言葉に反応するように兵士達に命令した。中軍の兵士達は抜刀し一気に走り出した。正宗達も兵士達と共に馬を走らせる。
正宗が襄陽城の中程に到着すると既に乱戦の状態にあった。辺りから剣撃と怒号が鳴り響く。正宗軍の兵子と蔡瑁軍の兵士が剣や槍を交え戦っていた。正宗軍が優勢で
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