第173話 総攻め
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正宗は昂揚する正宗軍の兵士達に向け更に檄を飛ばした。
「敵を殺せ――! 賊を殺せ――! 敵を殺せ――! 賊を殺せ――!」
正宗軍の兵士達も正宗の言葉に呼応するように力強い声で応えた。義勇軍の兵士達は次第に恐怖の表情を浮かべ、最後は完全に沈黙していた。その様子を正宗は確認すると神妙な面持ちに変わる。彼は目を瞑り気持ちの整理をつけるように間を置くと口を開いた。
「これより襄陽城を攻める!」
正宗は腰から片手剣を抜刀し天に掲げた。
「皇帝陛下に栄光あれ――!」
正宗は兵士達全員に響き渡るような大きな声で彼等に叫んだ。正宗軍の兵士達は一糸乱れぬ動きで剣を抜刀し正宗に負けじと大声で叫んだ。それに遅れ義勇軍の兵士達も声を上げた。彼等からはやる気が失っているように見えた。
正宗は周囲を見回し兵士達の様子を確認すると踵を返し家臣を見回すと壇上より降りていこうとした。彼を追うように朱里が駆け寄ってきた。
「正宗様、良きご演説でございました。冀州軍の戦意は十分。蔡徳珪の首は今日にでも手に入りましょう」
朱里は正宗に小声で囁いた。
「豪族達と義勇軍には気をつけておけ」
正宗は朱里に指示を出した。朱里は正宗の言葉だけで得心した表情に変わった。
「完全に防ぐことは難しいと思いますが、ご期待に応えれるように行動いたします」
朱里は神妙な顔で正宗に答えた。彼女も豪族と彼らが率いる義勇兵が戦場のどさくさに紛れて匪賊行為を行うと見ているのだろう。
「襄陽城には平民もいる。死が避けられぬのであれば楽な死を与えてやりたい」
正宗は苦悩した表情を一瞬浮かべ朱里に言った。彼の言葉に朱里は感慨深い表情で顔を少し伏せ拱手した。
正宗軍は、前軍の将は星と愛紗、中軍は正宗、後軍は朱里と宗寿、長蛇の陣形で襄陽城に突入した。その後ろを孫堅軍、義勇軍が続く。蓮華と思春は正宗がいる中軍にいた。
蔡瑁軍の抵抗は思いのほか激しかった。城門を破られ後がないと理解した蔡瑁軍は東門に大半の兵力を集め防戦を試みた。これに対して正宗軍は盾部隊を前方に配置し長槍部隊による槍衾で蔡瑁軍を攻撃した。蔡瑁軍の後方から矢の雨が時折飛んできたが、統率の取れた盾部隊によって遮られた。
蔡瑁軍は序盤激しい抵抗を示したが味方に死者が出るに従いじわじわと押し出されていった。それでも蔡瑁軍は正宗軍を押し返そうと果敢に攻撃を仕掛けてきた。
「守る者がある者は強いな」
正宗は馬上より遠い目をして蔡瑁軍と前軍が衝突する付近を凝視していた。蓮華は正宗の視線の先を追ったがはっきりとは見えなかった。しかし、正宗が何を言わんとしているのかなんとなく理解できたのか哀しい目で正宗の見る方角に視線を向けた。
この期に及んでも蔡瑁
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