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真・恋姫†無双 劉ヨウ伝
第173話 総攻め
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今日で終わらせる。皆々、心を引き締めことに当たって欲しい」

 正宗は厳かで覇気に満ちあふれた声で兵士達に語りかけた。正宗軍の兵士達は精悍な面持ちで彼の話しを黙って耳を傾けた。孫堅軍の兵士達も昨夜自分達の主君の窮地を救ってもらった経緯もあり、正宗に対して敬意の視線を送っていた。
 対して急ごしらえの寄せ集めの義勇軍は、正宗の話を眠たそうに聞いている者、小声で会話をする者、下卑た表情を浮かべ正宗の話を聞いていない者、統率されている雰囲気は全く感じられなかった。装備品は当然ばらばらで山賊に毛が生えた程度風体であった。
 正宗は壇上から遠目で義勇軍の様子を確認できたが別段気にすることはなかった。彼にとって義勇軍など数には入っていないだろう。

「皆に申しつけておくことがある!」

 正宗は兵士達を見回すと一際大きな声で彼等に対して声を上げた。彼の声に義勇軍は驚いた様子が遠目からも確認できた。その様子を彼は一瞥すると視線を正面に戻した。

「襄陽城の城内における略奪は一切禁ずる!」

 正宗は覇気に満ちた強い口調で叫んだ。その言葉を聞いた義勇軍は動揺している様子だった。

「この禁を犯す者達は何人であろうと死罪を申しつける。努々(ゆめゆめ)忘れる事無きようにせよ!」

 正宗は義勇軍の様子などおかまいなしに話を続けた。彼の言葉に呼応するように正宗軍の兵士達は大きな声を上げ同意した。
 対して、正宗軍の周囲にちらほらといる豪族達が率いる義勇軍からは不満気な空気を放っていた。
 当時の攻城戦において敵城への略奪行為は普通に行われていた。今攻めようとする城は朝敵が篭る城である。義勇軍にしてみれば略奪し放題と考えるのは至極当然ともいえた。寄せ集めの義勇軍の兵士達の多くは略奪による実入りを見越して、今回の戦に参加した者達は略奪と城内の女が目当てだったのだろう。それは彼等の落胆の色からすぐにわかる。
 正宗は自らの発言に賛同していない雰囲気を出す義勇軍が集まる場所を見渡す。

「余の命令に不服がある者達はここから去るがいい!」

 正宗はそう言い再度周囲を見回した。彼の声に反論を示す者達は誰もいなかった。

「我らは官軍である! 賊徒の集団ではない! この一戦は皇帝陛下の御威徳を荊州に示すためのものである。正義の軍が匪賊に成り果てるなどあってよいのか! 皆の者!」

 正宗が右手を掲げ正宗軍を鼓舞すると正宗軍の兵士達は主君に呼応するように力漲る声でかけ声を上げた。その声は辺りに響き、体の中まで響いてくる程だった。義勇軍は正宗軍の放つ迫力に気圧されていた。

「諸兵諸君! 余の名において許す。略奪を行う者に容赦はいらん! その場で殺せ! 貴賤を問わず匪賊の行いをする者は賊である。賊には等しく死を与えるのだ――!」

 
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