45話
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あの後、一夏を保健室に放って箒らに看病を任せた。ちょうど通りかかった楯無さんにもまとめ役でついていて欲しいと頼みその場を後にする。楯無さんは何が言いたげだったが俺はあえて気づかぬふりをして別れた。
そしていつも通りの鍛錬を始める。俺のISが治るまで実践は積めないがそうそうISを使うことは無く。殆どが肉弾戦だった。生身でもISに負ける気は無かったが。
そして帰ろうと荷物をまとめていると、ドアの先に1人壁にもたれている気配を感じたので少し警戒しつつドアを開ける。するとそこには楯無さんが何が思い詰めるように下を向いていた。
「楯無さん?どうしたんですか?」
「っ?や、泰人くん?こ、こんばんは?」
何故か動揺しながら疑問形で挨拶を返してくる。
「ええ、・・・いつからそこにいたんですか?」
「えっ・・・10分くらい?」
嘘だ。きっと一時間は超えているだろう。そのまま別れるほど無関係でもないので部屋で話しましょうと言うと承諾してくれたので移動する。ついでに自販機で二人分も確保。
「珍しいですね。楯無さんが俺の部屋でごろごろしてないなんて」
「ええ。そうね」
「楯無さんも怪我治ったんですか?」
「ええ。大丈夫よ」
「・・・」
「ど、どうしたの?」
さっきからこの調子である。とくに失礼なことはしてないはずだが質問しても、ぶっきらぼうな返事しかこない。
「逆にこっちが言いたいですね。何か困ったことあるんじゃないんですか?」
そう言われてドキッとする楯無。そりゃあそうだろう。目の前の人のことで困ってるなんて言えるはずもない。
「べ、別に何もないわよ。そ、それよりそっちこそ怪我は治ったの?」
「もう平気ですよ」
「本当?」
「本当」
「完璧に?」
「完璧に」
「でもでもーー」
「あんまりしつこいと女性でも嫌われますよ?」
うぐ。と口を閉じる。それでまたふりだしに戻ったので適当にお菓子を備え付けの棚から取り出し、飲み物を並べる。
「すいません。少し言い過ぎました」
「・・・別に気にしてないわよ」
「ははは。でも本当は何を聞きたかったんです?体なんて傍目でもわかるくらい治ってるのに」
相手に謝りつつ、本音を言いやすい雰囲気をつくる。決して強く言い過ぎないように。これも泰人の才能の一つだった。
「・・・今朝、織斑先生が呟いてたの」
「・・・ええ」
「貴方が行く道は何もないって」
「・・・!そう、ですか」
まさかそんな事を言っていたなんて知らなかった。でもそれくらいわかっていた。改めて問題の深刻さがわかる。この言葉を一番聞かせたくなかった人に聞かれてしまったと。
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